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「フガフガっ…!!(やめてよ)」
「あぁ、小津っち。約束どおり、吉岡は呼んであるから。全部終わったあとにね」
「……!」
「この際、小津っちはどっちでもいいんだ。鎌田を呼び出すオトリになってもらっただけだから。鎌田は私が呼んだからって来ないっしょ。大好きな深雪ちゃんが大変なことになってる、って聞いたら駆けつけるに決まってるじゃん」
(最低…)
目尻からポロっと水滴が落ちる。
「小津っちは、私と一緒に外に出てもいいよ」
私は横に首をフルフルと振る。
渓ひとりを置いていけない。
それに、きっと…あの人が……。
「ああそうなの。じゃあ私は出るね。仲良く友情ダブルプレイ楽しんでね。くすっ。じゃ」
ドアを開けると、白い外光が入ってくる。
そして、そこには山センの姿があった。
「やま…せ」
環菜はまん丸の目をして、驚きを隠せない様子だ。
パシャリ。
と、フラッシュが連続でたかれる。
山センが持っていたスマホからだった。
「お前ら、これ犯罪だからな」
「わ、私は知らない! コイツらが勝手に」
「「「おいっ!」」」
裏切った環菜に対しての、男たちの怒号が聞こえる。
倉庫の床に倒れている渓を見て、山瀬先生の形相が、一瞬にして変わった。
その恐ろしさが伝わったのか、環菜が慌てて外に逃げていく。
山センは気にもとめずに、男たちに向かっていって、拳をあげた。
「フガー!(ダメー!)」
と叫ぶのに、我を失った山センの勢いが止まることはない。
次々になぎ倒していく。
男の1人がモップの柄を山センの頭に振り落とそうとして、山センが振り払う。
メガネが落ちて、争う内に踏まれて粉々に割れる。
ドゴッ
山センの頬に拳が入り、口から血が流れた。
「……!!」
私はバタバタ足を鳴らす。
山センは、ペッと血を吐き出すと、
男の首を締め上げた。
「んんんー!!」
関節を外しただけらしく、男がのたうちまわる。
「証拠写真撮ったからな。お前ら全員牢に入れてやる…」
静かなのに、眼光が鋭く凄みがある。
3人の男の子たちは逆らえず、恨みがましい顔を向けるのが精一杯といった感じで、足を引きずりながら外に出ていった。
外からは、文化祭で騒ぐ人たちの声がにぎやかに聞こえてきていた。
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