星との出会い

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『オリエンテーション研修』 教室の黒板に書かれた文字を見て、渓は頭を抱えた。 (あー行きたくない……) 高1の学年全体で、隣の県のキャンプ場で一泊する。 仲間同士で親睦を深めるための、この高校の伝統行事だという。 休めるものなら休みたいが『総合学習』という教科の、単位の1つになってしまっている。 そして特に気が重いのが、バンガロー部屋の班分け。 どうせ……好きな人同士で組め、でしょ。 と思っていたら、出席番号(あいうえお)順に4人ずつで、勝手に決められていた。 鎌田の「か」なので、一番最初のAグループ。 否応なしに、班ごとの打ち合わせが始まった。 「まずは自己紹介からしようか。私は小津深雪、□□中出身ね」 …小津さんだ。 「佐藤よし枝です。えっと、この近くに住んでて」 「もしかして△△中?」 「そうそう!」 「あそこ、荒れてなかったぁ? 評判よくないよねー」 もう1人の……いつも吉岡の取り巻きにいる女の子が口をはさんでくる。 渓が吉岡颯汰と話すと、キッと睨んでくる子だ。 最も関わりたくない、と思ってたのに…。まさか一緒の班だなんて。 「私は須藤環菜。もともとは◯◯大学付属中学にいたんだけど」 「◯◯大学! すごい!」 小津さんが反射的に言う。 「◯◯大なんて、偏差値低いじゃん。たいした男いなかったし。彼氏にするなら頭いい男のほうがいいからココ受け直したんだ」 ますます苦手……。 渓は表情に出さないように、下を向いてやり過ごす。 「私の姉が2学年上にいるんだけど、生徒会長やってるんだよね。それと、天文部の部長……。ぷっ!天文部って!なにそれ?笑えない?」 小津さんと佐藤さんが苦笑いする。 小津さんが優しげな目で、渓をちらと見る。 あ、次は私の番だ。 「私は鎌田渓で」 環奈がいきなり席を立ち上がった。 「吉岡ー! ちょっとあっち行ってくるから、私に構わず続けて」 と言って、吉岡の席へ向かっていった。 渓含めた3人は、呆気にとられてしばらく無言になる。 「……」 なんて、わかりやすい嫌がらせ。 アンタなんかの自己紹介は聞きたくない&私の吉岡に手を出さないでアピールなのか。 どちらにせよ感じが悪い…。 「鎌田さん、続けて」 朗らかな小津さんの声で、渓は我にかえる。 自己紹介といっても、出身中学を言っただけで終わった。 小津さんは「バンガローは虫が出るらしいよ」笑いながら言うと。 「えー」と佐藤さんがのけぞった。 「鎌田さんは虫大丈夫?」 「……うん」 小津さんの明るく大人な対応に、救われる。
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