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文化祭当日になっても。
渓の気持ちはまったく晴れない。
断られる、って。
わかってたことなのに…。
山センに御守りをあげた、と深雪に言うための告白だったのに…。
「そういう目では見られない」なんて、いざ本人から言われると……ショックで。
(深雪にも言えない…)
菜月と行った露店のフランクフルトはあいにく売り切れていた。
「他に売ってるところないか探してくる!」と菜月が去ったため、渓は1人で歩いていた。
グラウンドでは、サッカー部がシュート体験の催しをやっている。
GKを防いで、ゴールに入れたら景品がもらえるというものだ。
中学生が喜びながらシュートするが、なかなか入れられない。
「例を見せてほしい」
1人が吉岡の肩を叩く。
「おー颯汰ー!」
「見たい見たいー!」
とヤジがわく。
困ったように周りを見渡していた吉岡だが、渓を見つけるなり…ボールを足元に構えた。
ワーワー!と騒いでいた観衆も、そのときばかりは一瞬…静かになる。
そして、吉岡が蹴りあげて、宙に浮いたサッカーボールは、吸い込まれるようにゴールに入っていった。
たちどころに沸く歓声。
「すごい……」
渓も思わず声をもらす。
「ね、すごいよね。吉岡って」
この声……。
ゾクッとして、後ろを振り向くと。
須藤環菜が笑いながら立っている。
「それよりもさぁ。小津っち…体育館倉庫裏で大変なことになってるよ。ガラ悪い男子たちに喫煙注意したみたいで。ほら、小津っちって正義感強いじゃない」
「……!!」
怪訝な顔を浮かべる渓に対して。
「嘘じゃないってば!これから先生呼びに行くところだから。一緒に行く?」
渓は環菜をにらみつけて、走っていく。
「ちょろいちょろい」
須藤環菜がニンマリ笑う。
「須藤さ…ん」
背後には、渓と同中だった4人組の女の子たちがいた。
夏祭りで渓に絡んでいた子たちだ。
「渓……どうするの?」
心配そうに聞く。
「別に。関係ないでしょ。アンタたちだって目障りだって言ってたじゃん」
「…そりゃあ……そうだけど」
顔を見合わせる。
「鎌田は、昔からいろんな男と遊んできて。だからアンタたちは見向きもされなかった、っていう逆恨みなんでしょ。というか、鏡見たら? アンタたちブス4人が束になっても鎌田は相手にならないと思うよ。くすっ」
「な、なにそれ」
「しかも□□高校なんてバカの行く高校だし。友情だけは永遠? 大事にしてね。ふふっ」
須藤環菜はバカにしたように笑って、去っていった。
「ひ、ひどいぃ~!」
1人が泣き出すと、仲良し4人組はつられて泣きはじめた。
その頃、渓は深雪を探していた。
半信半疑でいたが、まさか!と思い、体育館倉庫の中に入る。
と突然、柄の悪い男たちに囲まれた。
暗い空間、むき出しになった性欲…。
抱きつかれるとあの小4の夏祭りのことがフラッシュバックした。
「キャー!!」
叫んでいる中で。
あのオリエンテーションの夜。おぶわれながら星を見上げたことを思い出す…。山セン…。
(助けて)
渓は、そのまま気を失った。
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