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「・・・なるほど・・・でも下の名前分からないので無理です!」 「そんなの理由にならないでしょ!」 「冗談ですよ。智也コーチ」 「だからコーチはつけなくていいの」 「じゃあそのうち変えます」 「蒼のいじわる」 突然呼び捨てにされてドキッとした。 「どうもすいませんね、住吉コーチ」 「だから・・・」 デートの時よりも自然に会話ができて楽しい。最初からこうやっていたらよかったのに。 そんな後悔も含めて私たちの思い出だ。 ここからは自分で決めた道を歩いていく。 その道は平坦だけではなく障害物や苦しい上り坂や転げ落ちるような下り坂もあるだろう。 それでもいい。もう1人じゃないから。 「送ってくれてありがとうございました。お休みなさい、智也さん」 驚いて口が半開きになったままだが扉を閉めて家に向かった。 まだ心臓がドキドキと脈打っている。 名前を呼ぶだけで、呼ばれるだけで幸せだと感じられるこの幸福感は一生忘れたくない。 『蒼のバカ』 『そのセリフそのままついさっきのあなたに返します』 『ありがとう。おやすみ蒼、またね』 不器用だけれど素直にお互いに歩み寄っていこう。 またね その言葉がやる気になり、力になるとは思っていなかった。 自分を思ってくれる人がいて、大事にしたいと思える人がいるだけでこんなにも世界は明るく見えるのか。 この光を見失わないようにちゃんと前を向いて歩いていこう。 たとえ光が小さくなる日が来るとしても。
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