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29th
地に足が着くと落ち着いてきた。降りるときに手を貸してくれ、そのままの流れで手を繋いでいる。
「最後に戻りながら自転車では通らなかった所を見て帰ろうと思うんだけどいいかな?」
「はい、大丈夫ですよ」
「・・・手は繋いだままでもいい?」
「・・・別にいいんじゃないですか?」
「汗が気持ち悪かったりしたら言ってね」
「・・・はい」
何度か手を拭いながら歩き続け、木陰のベンチで休んだ。
そろそろ閉園時間だが夏の空はまだ明るい。
「帰りは途中で食事をしてから送っていこうと思っているんだけど大丈夫かな?」
「さっきから質問ばかりですね。私はどこにでもついていきますよ」
「ごめん、じゃあそろそろ行こうか」
また謝る。なんだか今日の住吉コーチは変だ。何でも聞いてきたり、すぐに謝ったり。
別に怒るような事ではないのかもしれないがイライラしてしまう。
車に乗り込んでからはぽつぽつと会話をしているが上の空だった。
自分が何にイライラしているのかも、どうしてこんなにイライラしてしまっているのかも分からない。
やっぱり私は子供だ。
「蒼ちゃん?」
助手席の扉を開け、顔を覗き込まれてようやく目的地に着いたと気が付いた。
「ごめんなさい、ぼんやりしていて」
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