30th

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「じゃあ何でデートの後からずっと避けているの? 住吉コーチはあれから上の空な事が多くて困っているんだよ」 「それは私には関係ないです」 「そう? 早く仲直りしてよね」 「だから・・・」 息が苦しくてこれ以上言葉が続かなかった。 別に喧嘩をしたつもりはないが、八つ当たりをしてそれから連絡を取っていない。 自分が悪いとは思っているがどうしたらいいのか分からなかった。 喧嘩をしたのなら謝ればいいが、あれは喧嘩だったのか迷った。 それでも謝った方がいいのは分かっていたが、また住吉コーチが謝ってばかりで気を使われる関係になるのは嫌だった。 「2人とも不器用だからな」 溜息をついてから独り言のように続けた。 住吉コーチとは自分の教え子の高校最後の試合を見に行く約束をしていて、そこで1番上手かったのが住吉コーチだった。 試合は負けてしまったけれど実力はあるから彼は大学や海外に行ってプレーするのかと勝手に想像していた。 でも教え子から彼は家庭の事情で卒業後は一般企業に就職する予定でテニスはこれで終わりにするのだと言われ、すぐに本人に声を掛けたんだ。
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