43rd BASE

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 亀ヶ崎に歓喜の輪が広がる一方、三塁側ベンチの羽共ナインは悔しさを噛み締める。中でも美久瑠は試合が終わった瞬間に顔を伏せ、咽び入ってしまった。彼女の元には一柳が歩み寄り、肩を優しく叩いて慰める。 「泣くなよ美久瑠。ここまで連れてきてくれてありがとう」 「ぐすっ……、……ごめんなさい、ごめんなさい」  美久瑠は只管に謝罪を述べる。真裕にホームランを打たれていなければ、その前の七回裏を抑え切っていれば――。後悔と不甲斐無さが体内を駆け巡り、申し訳無い気持ちで一杯になる。 「美久瑠が謝る必要なんて無いでしょ。寧ろこっちは感謝してるんだから。……さ、胸を張って整列しよう!」  一柳が美久瑠を抱きかかえるようにして立ち上がらせる。泣きじゃくる美久瑠とは対照的に、一柳の表情は非常に晴れやかで清々しい。全国制覇こそ逃したものの、甲子園球場という聖地に立てたこと、そしてこれほどの激闘ができたことに、心は満たされている。 「……美久瑠、来年こそ日本一になれよ」 「はい……、もちろんです」  美久瑠は顔を真っ赤に腫らしながらも、一柳の言葉に力強く頷く。夏大の悔しさは夏大で晴らすしかない。来年は自分がマウンド上で快哉(かいさい)を叫ぶと、彼女は心に誓うのだった。 「六対四で亀ヶ崎高校の勝利。礼!」 「ありがとうございました!」  両チームが試合終了の挨拶を交わす。持てる力の全てを出し切って戦った選手たちには、観客から惜しみない拍手が送られる。  亀ヶ崎高校女子野球部、悲願の全国制覇を達成。甲子園球場に決勝の舞台を移した最初の大会で、初の栄冠に輝いた。 See you next base……
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