第4章 曹香の幸せ。

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第4章 曹香の幸せ。

西暦226年06月29日。 ここは洛陽にある夏侯覇の屋敷。 夏侯覇が雹華と逢わない内に、 雹華は15歳を迎え曹香(そうこう)…字は万姫(ワンチェン)と名を改める事となりました。 凛風「…仲権、雹華様は名前を改められる事になり郭淮様と祝言を挙げる事となったらしいわよ。」 夏侯覇「ちょいちょいちょい… 聞いてない、聞いてないから…。」 22歳になった夏侯覇でしたが今は亡き父親である夏侯淵のあだ討ちの事ばかりを考えていた事もありまして… 曹香に縁談があってもうすぐ祝言を挙げる事になると言う事をどうやら今聞いたばかりのようでした。 夏侯覇「母上、そういう重要な事は早めに教えて下さいよ?」 曹香が祝言を挙げるまで後数ヶ月しかない事を知らされた夏侯覇は混乱していました。 しかし…     凛風「私は何度も貴方に伝えましたが 聞いてなかったのは貴方のミスでは?」 凛風(リンファ)…夏侯覇の母親で今は亡き夏侯淵の妻。 夏侯覇「お嬢の危機を2年も知らないなんて俺…騎士(ナイト)失格か…」 凛風「…」 夏侯覇「母上、沈黙が逆に辛く感じます。」 凛風「さて…騎士になるには速さと勢いが大切です。どうしますか?」 夏侯覇「2つとも意味は同じ様な気が致しますが…速さが大事ですね…。では…」 凛風から謎の励ましを受けた夏侯覇が 向かった先は蒼穹宮でございます。 元は後漢帝国の王宮があった洛陽宮でしたが滅亡した王朝と同じ名前では縁起が悪いと曹丕が勝手に名付けた名前にはなります。 しかし…そんな曹丕ですが今まで 色んな人を粛清してきたせいか… このところ、体調が思わしくなく… この日の朝から危篤状態になっていました。 曹丕「…」 卞皇太后「数え切れない人の怨みをその身に受けたせいでしょうね…。罰が当たったのかもしれません。」 皇帝陛下が危篤状態であるというのに…郭鑾は皇后でありながら夫である曹丕の世話をするつもりもないらしく卞皇太后に丸投げしていました。 卞皇太后「あの女もついでにどうにかならないのかしら?甘い汁ばっかり吸って妻としてするべき事は全部私に丸投げするなんて…」 卞皇太后が何を言っても 曹丕は何も返事をしません…。 それもそのはず…。 卞皇太后「…子桓!」 もう既に眠ったまま息を引き取っていたのですが卞皇太后がそれに気づかなかったようでした。 西暦226年06月29日。曹魏で12を争うくらい冷血漢な曹丕は40歳の若さで幼い頃よりの持病だった肺結核を悪化させてしまった事で命を落としてしまいました。 西暦226年07月01日。曹魏初代皇帝である曹丕が跡継ぎを決めなかった為跡継ぎを誰にするのか曹丕の葬儀を終えてから臣下達はずっと揉めに揉めていました。 曹丕…死去 曹彰…死去 曹植…酔っ払い 曹熊…死去 曹宇…まだ15歳で元服したばかり… 司馬懿「先帝の長子である飛龍様こそ 皇位を受け継がれるべき存在ではないか。」 司馬懿からの言葉に他の臣下達は、 ざわざわし始めました…。 司馬懿は曹丕に近い存在ではありますので曹丕から飛龍の存在を聞いておりました。 しかし… 王朗「それは誰だ?司馬殿。跡継ぎになられる方は人望、知名、色々な意味で有名どころでなければならぬのではないのか?」 司馬懿「有名どころで言えば子建殿になりますが彼は詩と酒に興じる好奇心旺盛な風来坊ですから陛下と呼ばれる存在には向いておりません。酔っ払いの陛下など此方から御免被ります…」 王元姫の祖父である王朗を軽く論破した司馬懿は早速鄴城へと向かい飛龍に即位して貰えるよう要請をしに行きましたが… 司馬懿「おや?仲権殿。如何しました?」 その途中で夏侯覇を見つけたので 司馬懿は声を掛けました…。 夏侯覇「29日からずっと来たり引き返したりを繰り返していまして…」 司馬懿「?分かるようにきっちり説明して貰わなければ困るではないか…」 首を傾げる司馬懿に対して夏侯覇は、 色々な諸事情を話しました。 すると…司馬懿は… 司馬懿「ふむ、もうすぐ万姫殿と郭淮の婚儀が成立してしまうが仲権殿はそれに納得が出来ず…先帝と話をするつもりだったがこんな事になってしまった…と。ならば…今から私が来る場所へ付いてくれば良い。そこにいる方ならきっと万姫殿の力になって下さるであろう…」 夏侯覇は首を傾げながらも司馬懿に言われる通りに馬車へ乗り込み月鈴の力になると司馬懿から太鼓判を押された人間の元へ向かいました…。 夏侯覇『誰だろう?』 その人は… 飛龍「仲達か…」 鄴城に1人で〈侍女や従者はおりますが…〉住んでいる夏侯覇より1つ年下でございました。 司馬懿「飛龍様、御無沙汰しております。この度は私、お迎えに参りました…」 飛龍「俺は先帝から冷遇をされていたんだぞ?未だに幼名を付けられていると言うのにそんな俺が曹家の跡を告げるはずがなかろう…」 夏侯覇「…。つまり…お嬢の兄上と言う事でしょうか?」 司馬懿は、 夏侯覇をチラッと横目で見ると… 飛龍の前に腰を下ろしました。 司馬懿「飛龍様、皇帝が空白のままでいては蜀漢や呉が攻め寄せて来ます。」 飛龍「そうだな。で、君は? 仲達は度々1人で暮らす僕の様子を 見に来てくれているんだ…」 司馬懿「この者は我が配下で夏侯仲権と申す者でございますが万姫様と相思相愛でありながら大変な事態に巻き込まれてしまったのでございます。」 飛龍「詳しく聞かせて貰おうか?」 司馬懿が事の顛末を飛龍に説明すると 飛龍は決意を固めたようで… 飛龍「仲達、万姫の為に出来る事があるなら俺は最大限の努力をする…。行こう、洛陽へ。魏の皇帝となり勅旨を無効にしてみせる。」 司馬懿「御立派なお覚悟でございます。仲権、そなたも飛龍様に礼を言うのだ。」 夏侯覇「ありがとうございます。」 飛龍「礼なら万姫をきちんと幸せにしてから言うて貰おうか?2年も危機に気づかん男では不安ばかりが先走るのだが…。」
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