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6.悪役令嬢は攻略対象にも手厳しい。
前言撤回。
あのBBA速攻でクビにしてやる。
私はズキズキ痛む手を隠し、ミルクティーを口にする。
言葉攻めはともかく、ムチで殴るなんてどうかしている。今まではそんなことしなかったから、メソメソ私が泣いていることに満足していたのだろう。
だが、いくらネチネチと嫌みを言っても、私が一向にへこたれないものだからついに侯爵夫人の我慢の限界が超えたらしい。
まぁ、確かに生意気だったのは認めますけれども、言われた通り自分で調べて、家庭教師を雇い直し、求められるレベル以上の課題をこなしてきてやったと言うのにこの仕打ち。
いたいけな可愛い子ども相手に何してくれてんのよ、本当。
暴力はいただけない。私は気に入らないからといって暴力に訴えるそんな三下の悪役令嬢にはならないので、侯爵夫人からこれ以上学ぶ事はなさそうだ。
とは言え、王城で彼女が雇われている以上私の一存で簡単に止めさせることは難しい。彼女に暴力を振られたと言う決定的な証拠が必要ね。
さて、どうやって追い詰めてやろうかしら?
私が内心でそんな計画を立てていると、
「リティー、上の空だけどどうしたの?」
と可愛らしい王子様から声がかかった。
小首を傾げたロア様の髪がさらりと流れる。はぅわぁーかわゆい。そして神々しくて尊い。
「リティー?」
「ふふ、申し訳ありません。ロア様があまりに素敵なので見惚れておりました」
私が微笑んでそう言うと、ロア様は照れたようにはにかんで笑い返す。
うん、ロア様今日も可愛らしさは花丸満点と私は内心でぐっといいねボタンを連打する。
今日も今日とて王城に上がった私は、侯爵夫人と一戦を交えたのち、ロア様と交流を深めるべくお茶会に参加していた。
とは言え、実は前回のお茶会から結構な日にちが空いている。以前は週1レベルで顔を合わせていたのだけれど、悪役令嬢になってやると決めた私の毎日が割とハードで忙しくて全然都合がつかなかったのだ。
「久しぶりだね、リティカ。最近、お勉強を頑張っているんだって母上に聞いたよ」
にこにこっとロア様は楽しそうに話しかけてくる。
「ええ、将来に向けて研鑽しなければと思いまして」
「そっかぁ、リティーは私のお嫁さんになるために頑張ってくれているんだね。だけど、なかなか会えなくて寂しかったよ」
憂い顔でそう言われ、私は乾いた笑みで誤魔化す。お嫁さんを辞めるために頑張ってるんです、とはこの可愛い美少年には言えない。
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