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「くっ、今なら公爵家の財力を以って課金し放題だと言うのにっ!!」
今であれば運営様の思惑通り、レアアイテムガツガツ投入して、いくらでもお金で解決できると言うのに!
生まれ変わってしまったことが悔やまれてならない。いや生まれ変わらなかったら、そもそもそんな財力ないんだけどね。
「はぁー、それにしてもライラちゃん超可愛いかったー。ロア様と並ぶと本当にお似合い」
私は白昼夢で見た、2人の姿を思い出す。
さすがメインのヒロインとヒーロー。並んだ姿はとても神々しく、少し憂いを帯びたヒロインの儚げな顔とヒロインを守ろうとする毅然としたロア様のお姿。
断罪イベントとは乙女ゲームの最大の見せ場であるし、国を守るために悪役に立ち向かう推しの姿はとっても尊いのだけれど。
「現実の世界でやったらアウトでしょう。そもそも公爵家との婚姻は、陛下が認めた契約ですし」
なんてこった。このままではあの可愛いロア様が大変な事になってしまう。私にベタ甘のお父様を怒らせて公爵家を敵に回すなんて下手したら廃嫡ものだ。
「私、他人のものには興味ありませんし、婚約破棄する分には全く構わないのだけれど、きちんと手順を踏んでいただかないと」
公爵家にも迷惑がかかりますし。
うーんと私は己の今後の身の振り方を真剣に考える。
確か断罪後の悪役令嬢の処遇は、国外追放だったはずだ。
「国外……追放、だと!? えっ!? いいんじゃない」
むしろアリよりのアリじゃない? と私は断罪後の自由に歓喜する。
まぁ私これでも公爵令嬢ですし、貴族的な義務もわかってますし、臣民として王子様に仕えるのも悪くは無いのですけれど。
「私、正直目立つの苦手なのよね」
前世を思い出してしまった今ならなおさらそう思う。
王太子妃になりいずれ王妃として国民を導く国母になるだなんて、考えただけで胃がきりきりする。
「はっ! これは是が非でも、ライラちゃんには王子ルートに行ってもらわねば!」
愛し合う2人が結ばれて、しかも私が背負うべき義務をヒロインが肩代わりしてくれると言う。
え、何それ、控えめに言って最高なんだけど!?
「公爵令嬢が自分から義務を放棄するのはだめだけど、出てけって言われるならしょうがないわよね。いいなぁ、国外追放」
だって国外追放って、つまるところ海外留学ってことよね。公爵家の財力と権力を駆使すれば、そこそこ良いところに追放されそうだし。
「あ、どうせ国外追放するなら、マリティがいいなぁ。観光名所が素敵なのよね〜」
私は海が近くて美しい観光盛んな小さな国マリティを思い浮かべる。昔、家族旅行で行ったけれど、なかなかいい国だった。よし、追放先はそこにしよう。
私は次々にこれから先のプランを決めていく。
よし、今世の目標が決まったわ。
「待っていてね、ライラちゃん! 私がちゃんとロア様をどこに出しても恥ずかしくない王子様に育成しておくから」
全力で王子を推して美スチルを回収し、断罪されて自由を手に入れるために、最高の悪役令嬢に私はなる!
そんなこんなで、本日前世を取り戻したこの瞬間『悪役令嬢、リティカ・メルティー』が爆誕したのだった。
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