花燭(八)※過激表現あり

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花燭(八)※過激表現あり

「お前が__自ら求め、淫楽に耽る日がそう遠くない将来に訪れるよう、注心努力する」  逞しい長躯に覆い被さられ、唇が耳朶(じだ)に触れる距離で甘美な低声を注がれた青藍は、ぞくぞくとして足の爪先で敷布を掻いた。  部屋中に響き渡っているのではと思われる程に鼓動が煩い。破裂しそうな胸の上に重ねた手に力が籠る。腕に当たる胸先の硬く尖った感触が酷く気恥ずかしかった。 「青藍。前戯の段階では極力苦痛を感じずに済むよう留意してきたが、交合となれば如何(どう)しても痛みが伴う。回を重ねる毎に慣れる筈だから赦して欲しい。耐えられないと感じたら遠慮せずに伝えてくれ、いいな」 「はい、承知しました……」  体を強張らせて答える青藍に目を細めた王は、平らな胸の中程で重ねられた手の一方を取って恭しく口付けた。柔らかな感触に誠意を感じ、僅かながら青藍の緊張が解ける。  挿入の位置につき端座した王は、何処からか取り出した白磁(はくじ)の小瓶を傾けて無色透明な液体を掌に垂らし、体温を移すように片手で揉んだ。  その手を青藍の股へと伸ばし秘所に潤いを足すと、余りを自身の陽物にも塗り付けている。その行為が酷く淫猥で生々しく見え、青藍は直視することが出来なかった。  ぬかるみに肉棒とは思えぬ程に硬い先端が宛がわれる。青藍は身震いして息を呑んだ。  異物を拒もうとする肉の壁を押し退けて侵入を開始する長大な肉の棒。焼けた石柱が押し入って来るような感覚に、青藍は白い喉を仰け反らせる。逃げようとする細腰を掴む王の手に力が籠められた。  痛みの中でも感じられる、最奥に物が当たった気配。額に脂汗を浮かべた青藍は、死に瀕した少女のように弱弱しい呼吸をしながら薄い胸を上下させた。王は動きを止めて、少婦の様子を注視している。 「耐えられそうか」  青藍は柳眉を顰めつつ小さく頷いた。息苦しさを覚える程の圧迫感に、月事の症状が重い時に似た鈍い痛み。青藍と同じく額に汗を浮かべた偉丈夫は、痛みに引き攣る頬に片手を添えて愛しげに撫でた。 「負担を強いて済まない……体が馴染むまで、このまま静かに過ごそう」  王は何処か辛そうに微笑して言うと、自身の下で苦痛に喘ぐ華奢な体へ結合を解かぬまま密着し、確りと抱き締めた。小振りな陽物が大小の体の間で押し潰されている。汗ばむ玉膚(ぎょくふ)に唇を寄せながら、王は青藍の苦痛が過ぎ去るのをじっと待った。  焦点の合わない瞳で高い天井を見ていた青藍は、やがて無意識に広い背中へ手を回した。初めて全身で感じる他人の素肌は、思いのほか心地良い。  若々しく張り詰めた肌の質感を味わう余裕が生まれた頃、不意に青藍の(まなじり)から涙が零れ落ちる。働きが鈍った頭では、その理由は解らなかった。  涙に気付いた偉丈夫が、涙痕(るいこん)を拭いながら平気かと訊く。青藍は若干の苦しさを滲ませつつ微笑んだ。 「はい、もう随分慣れたので問題ありません。配慮は不要ですから、煌龍様のお好きな様にしてください」 「滅多な事を言うな……では、動くぞ」  人の気も知らないでと言外に匂わせた王は、辛抱も限界であった様子で早速腰を動かした。最奥まで届いてもなお根元まで収まっていない陽物をゆるりと引き抜くと、再び静かに腰を押し込む。酷く緩慢な動きであったが、それでも臓腑を抉られる衝撃に青藍は息が詰まった。細腰に王の指が食い込む。 「っく……は……うっ ん……」  ゆるゆると出し入れされる長大な男性器。未知の感覚を受け取るのに必死の青藍は、途切れ途切れに喘ぎつつ、手首を交差させて紅潮した(おもて)を隠した。 「見ないでください、酷い顔してるでしょう」  十二分に理性を保ちながらの行為に自ずと眉根を寄せていた王は、初々しい言動に破顔する。外向けた青藍の手首に軽く唇を落とすと、玉の汗が光る精悍な顔を眼前に近付けて蠱惑的に言った。 「この凄艶(せいえん)な面容を鏡で見せたいくらいだ。純真無垢なお前が俺の下で顔を歪めて喘ぐ姿に酷く情欲をそそられる……それに必死の形相で腰を振る俺の方が、余程間が抜けて見えると思うが」 「そんなことなっ……煌龍様は雄々しくて、だから、ぁっ、私ばかり可笑しいのが嫌、なっ、んです! んんっ」  指を使って入口を慣らされていた時とは比べ物にならない程の水音を発する結合部。耳に流し込まれる淫猥に青藍は柳眉を顰める。その視界は涙で滲んでいた。痛みと快感が綯い交ぜになって薄い腹の最奥を襲う。 「んっ……く……っ……うっ……」 「こら、大事な手に歯を立てるな」  初めて聞く己の喘ぎ声に耐え兼ねて、王が目を離した隙に人差し指を噛んだ青藍は、直ぐに気付かれて口から指を引き離された。華奢な手をそのまま自身の顔へ近付けた王は、歯痕のついた箇所を甘く食み、舐める。 「はぁっ、は、はずかしくて……恃衞の方、外に、いらっしゃるのでは……もっ、話してるのに、動かないでっ……」  会話をする余裕が出来たのを見て、王は徐々に腰の動きを速めた。勢いを増した抽送に青藍は堪らず大きな声を上げ、下腹を穿つ相手にしがみ付く。 「一昔前は立会人が傍で見届けた位だ、気にするな」  青藍は揺さぶられるのに合わせて細かく喘ぎながら、立会人など以ての外だと渋面を作った。王は宥める様に青藍の眉間に口付けを落とし、続けて唇を合わせる。熱に浮かされた青藍は積極的に応えながら、これならば声が抑えられて良いと思った。  窮屈な陰部へ直接与えられる衝撃。巧みな抽送を忍耐強く続けられ次第に理性を欠いた青藍の頭は、鈍痛と共に与えられる刺激を悦び、新たな一突きを渇求していた。  当初と比べると幾分激しくなったものの、やはり男性を知ったばかりの少婦相手に相当な加減をしているらしく王の表情は険しい。汗に濡れたその苦しげな面容に確かな愛を感じ、青藍は酷く心を掴まれた。広い背中に回していた手を雄々しく美しい顔へ伸ばし、両頬を包む。  貪る様に舌を絡め合い、結合を深める。腹の奥底が熱でぐずぐずに溶かされている感があり、青藍は体の隙間に手を差し入れて己の下腹に掌を当てた。恥丘の薄い下生えが互いの汗で濡れそぼっている。  大部分が埋まった状態で深い場所を突いている陽物。その存在を確かめるかの如く、青藍は知らず知らず薄い肉の上から押し込むように指を這わせた。    互いに無言で行為に励むこと暫く。此方を見下ろす偉丈夫の、己を睨み付けるかの如き眼差しに青藍は打ち震えた。苦み走った表情をして小さく名を呼ばれ、本能で相手の絶頂を察して身を硬くする。  次の瞬間、最奥に叩き付ける様にして脈打つ剛直から精を放たれた。王の首に腕を回した青藍は、(ほとばし)る体液を感じて涙の浮いた目を閉じる。  抽送を受け止めている間、途中から弱い悦楽に絶え間なく襲われていた青藍は、漸く訪れた行為の終了に恍惚の顔をして息を整えた。  汗で顔に張り付いた髪を払おうとして頬を掠める指先が愛しかった。
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