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ある日、夢を見た。 地球という惑星の日本という国に生まれて生きていた夢だ。 僕は、いや、俺はウクラル王国の中級貴族の四男で8歳なのだが、目覚めてから気がついた。 このウクラル王国って、地球の日本で俺がやっていた王子様ゲームの舞台になっている王国じゃね? と。 そもそも俺は恋愛ゲームや乙女ゲームとかやらない高校生だったのだが、その王子様ゲームはすごく攻略が難しいゲームとして有名で、誰も攻略できないゲームだった。 攻略できたら賞金1,000万円だったから、暇だった俺は駄目もとでやっていたのだ。 そんな俺がウクラル王国の中級貴族の四男として生きている。 俺、知らないうちに転生してたのか? これが夢の可能性ありだが、あまりにリアルすぎて夢じゃない可能性が高い。 王子様ゲームの中の俺はサブキャラとして存在していた。 ゲームのオープニングで登場人物や世界観の設定説明があり、俺はそういうのを真面目に聞くタイプなので10回も繰り返し観たから覚えている。 ほとんどの分岐で15歳から35歳までに死亡するサブキャラだ。 唯一の生き残り分岐は、王子様が密かに恋している女性と王子様を結婚させて国王様にするしかないらしい。 15歳で死ぬのは絶対に嫌だし35歳での死も早すぎる。また転生できる保証はない。 これは死ぬ気で、いや、死なないように死亡ルートを回避しなければ。 途中までやったゲームでは、王子様の好きな女性は分からなかった。 王子様にも出会ってなかったし。 王子様と知り合いになったり会話をするのも大変なゲームなのだ。 ゲームの中ならともかく、現実世界で上級貴族の四男でもない中級貴族の四男が王子様と親しく会話する機会など普通は滅多にないわけで。 いきなり王子様に近づいて「王子様が密かに恋している女性は誰ですか? 俺が愛のキューピッドになりますよ」なんて聞いたら、護衛の兵士に斬り殺されかねない。 斬り殺されなくても、ブチ切れた親父や兄たちに家の地下に幽閉されるかもだ。 そんな可哀想な中級貴族の四男が雲の上の存在の王子様と親しくなる方法。 思いつくのは、貴族の子供や将来有望な平民が12歳から入学できる王都学園で王子様と同じクラスになり仲良くなるくらいか。 もしくは王子様の命の危機を俺が救うとか。 しかし、そんなタイミングよく王子様の命の危機の場面に俺が近くにいる可能性は低い。 そもそも王子様を助けられるかも分からない。 しかし、運良く俺は王子様と同い年なのだ。 王子様の名前はカレル=ドレク=ウクラル。 ウクラル王国の王子様だ。 カレル王子は国王の三男で王位継承権を持っている。 ウクラル王国の王位継承は実力主義で、国王は60歳で引退するのだが、その時に王位継承ポイントが多かった王子が国王になるシステムなのだ。 生まれたのが早い長男のほうが必然的にポイント獲得のチャンスが多いと思うのだが、それは運だし長男がポンコツの可能性はあるし。 カレル王子は三男だし、年齢的に王位継承権争奪レースに出遅れてはいないだろう。 これが八男とかだと絶望感しかない。 とにかく、三男のカレル王子様を無事に結婚させて国王様にするしか俺が長生きする道はないのだ。 下手すると15歳で死んでしまう。 せめて70歳までは生きて孫の結婚式くらいは出てみたい。 貴族の子供や将来有望な平民が12歳から入学できる王都学園だが、貴族の子供なら誰でも入れるわけではない。 ちゃんと入学試験はあるし適性検査や面接もある。 その前に親が入学を許可してくれなくては話にならない。 中級貴族の子供だと、普通は子供3人までしか王都学園には行かせないのだ。 とにかく王都学園は学費とか高い。寄付金もかなりしなくてはならない。 中級貴族でも子供3人を行かせるのが費用対効果としてぎりぎりなのだろう。 王都学園は諦めて普通の学園に行けってな。 よっぽど長男や長女、次男や次女がボンクラだったら四男を王都学園に入れるかもしれないが、あいにくと俺の兄や姉たちはみんな出来がいい。 俺は8歳ながら出来の良い兄や姉たちを持つ四男として、僕は普通の人生を送るのだから努力しても無駄なんだと思い、そんなに武術や勉強とか頑張ってなかった。 そんな事を8歳にして考えるくらいだから、俺の頭脳はなかなかだったのだろう。 それに、今は地球で高校生だった頭脳を持っている。 この頭脳を使えば王都学園の入学試験もクリアできるはず。 しかし、問題は親の許可だ。 おそらく資金の問題で却下されるはず。 しかーし。王都学園には将来有望な平民向けに奨学生制度がある。 入学金も学費も寮費もすべて免除。 たがしかし、平民しか奨学生にはなれない。 俺は平民になるしかない。 そう決意した8歳の春だった。  
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