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読了。あらすじを読んで抱いた期待値を遥かに超えてくる素晴らしい出来に、自然と感嘆の吐息が漏れた。
早速作者に対して称賛の意を示すべく「スター」ボタンの押下と簡単な感想を書き込む。
夏祭りを舞台にした中学生男女の甘酸っぱい恋物語。
話の面白さもさることながら、花火の色彩や屋台の匂い、夏の夜の湿った空気感までも伝わってくるような描写力には脱帽です!
送信。感想を送り終えた俺は、露天風呂の後に浴びる夜風のような心地良さに浸りつつもう一度フゥと息を吐く。
普通の人の読書ならここまでで終わり。だが、俺にはもう一つ先がある。むしろここからが本番と言ってもいい。
「そうだ、今日はこの世界へ行こう」
一人部屋のベッドの上に寝転がり、誰にともなく宣言し瞼を下ろす。
数秒後、目を開いた俺はすでに、夏の夜を彩る祭り会場の只中に立っている。
「おお。想像よりもだいぶデカい祭りだな」
行き交う人にぶつからないようにしながらあたりをぐるりと見渡す。
祭りの規模の予想は外したが、打ち上げ花火の鮮やかさや屋台から漂う香ばしい匂い、肌に纏わりつくねっとりした風の質感なんかはほとんどあの小説の描写から想像した通りだ。それだけでもう作者の技量の高さを知るには十分だろう。
しかし、さすがにデカすぎる。遥か遠くまで続く屋台の列を見ながら、制限時間内では半分も回れないかもしれないなと思う。
「まずは……やっぱりたこ焼きかな」
俺はとりあえず一番の大好物に狙いを絞り、賑やかな人混みを意気揚々と練り歩き始めた。
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