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隆将への謝罪と仲直りを終え、ついでに電車待ち中だったという怜を無理やり呼び戻し三人で隆将のお悩み相談会をした後、明日土曜だしこのまま泊まっちゃう?と盛り上がっていたところを隆将のお母さんに「三人分も布団無いわ!」と追い出され帰宅した、今。
夕飯とシャワーをパパッと済ませ、ベッドに転がりながら例の小説ページを開くと、早くも更新されてステータスが「連載中」から「完結」に変わっていた。おそらく下書きは元々できていたのだろう。
ホッと一安心したのも束の間、そのまま夜更かし上等で最後まで読み通し、無事ケイトたちが姫を救出できたことにもう一安心する。
「それじゃ今日はー……そうだ、この世界へ行こう! ……なんて、最初から決めてたけどな」
そうだ、ここまできたらやることなんて一つしかない。逸る気持ちに遠慮なく身を委ね、ギュッと目を閉じた。
瞼を持ち上げると、今日は白い壁に赤い屋根の立派な城の前から始まった。おそらくこの中でケイトたちが今、姫の父である王様に旅の労をねぎらわれているのだろう。
ふと足元に目をやれば、春夏秋冬全ての花がサラダボウルのように入り乱れ、俺の足を持ち上げんばかりに元気よく咲いている。
確かな生活の息吹を感じる民家の屋根には、見たこともない虹色の鳥たちがずらり並んで合唱している。
遥か彼方は、突き抜けるような青空が真っ直ぐに伸びた地平線と重なり、一つになって煌めいている。まるで俺の来訪を祝福してくれているみたいに。
これが本当の、千聖の心が描いた世界の姿。
嗚呼。なんて美しい世界だ。
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