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「おお! お前来てたのかよ!」
後ろから俺の声がした。振り返ると、ちょうど今城から出てきたであろうケイトと、他二人の姿もあった。
「ありがとな。君のおかげで、この世界と姫は救われたよ」
「僕たちの作者もね」
サンディとイラゴが言う。それぞれ、隆将と怜の声で。
……さっき千聖に、ペンネームなのになぜ分かった?と聞かれた時ははぐらかしたけど、そりゃ分かるさ。
俺がダイブする小説世界は作者自身の想像したもの。
俺たち三人をモデルに小説を書くような物好きなんて、どう考えても、世界に一人しかいないだろ?
「お前が例の作者の友達か! 会いたかったよ!」
「お、ローラ姫も来たのか」
ケイトの後ろから、豪華絢爛な衣装を身に纏った絶世の美女が現れた。驚き固まる俺に対し、彼女は「どうした? 顔色悪いぜ」と言った。千聖の声で。
「おい! 姫のモデルが自分とか、何考えてんだよアイツ!」
俺の会心のツッコミに皆がドッと湧く。いつもの教室でアイツらと笑い合っていると錯覚してしまうような状況下、俺はローラ姫の瞳から嬉し涙の雫が一粒、こぼれ落ちるのを見逃さなかった。
そして心からこう思ったんだ。やっぱり、俺は小説が大好きだって。
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