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「怜さぁ、何度も言うけど、俺たちといる時は小説読むのやめようぜ?」
放課後。いつものように駄弁りながら、俺は相変わらず昨夜のケイトたちの言葉について考え続けていた。
……実を言えば、彼らと出会った次の瞬間にはもう、彼らの言う作者とやらの正体ついてはおおよそ見当がついていた。
だけどその彼が「物書きとして苦しんでいる」という理由が分からない。何か、ヒントでもあればいいのだけれど。
イライラしたように怜が言う。
「いいだろ別に、小説好きなんだから。変に気を遣わないでいいと思ったから、僕はお前らと居るのが好きなんだけど」
「でも小説はさ、」
千聖がなぜか俺をチラリと見た。その意味深な視線に俺がハッとするのとほぼ同時に、隆将が座っていた机を両手でバンと叩いた。
「いい加減にしろ千聖!」
初めて聞く隆将の怒鳴り声が教室の窓を揺らし、俺も千聖も怜も、一斉に肩を縮み上がらせた。
「人の趣味に一々口出すなよ! 何が気に入らないのか知らないけど毎日毎日、怜が可哀想だ!」
一気に捲し立てた後、隆将は急速冷凍されたようにいつもの穏やかな笑顔を貼り付け「すまん千聖、ついカッとなった」と言って先に帰ってしまった。
残された俺たち三人は呆気にとられしばらく固まっていたが、誰からともなく「帰るか」と言って教室を後にした。
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