ダイブ〜君の世界からSOS〜

8/12
前へ
/12ページ
次へ
✳︎✳︎✳︎ 「怜さぁ、何度も言うけど、俺たちといる時は小説読むのやめようぜ?」  放課後。いつものように駄弁りながら、俺は相変わらず昨夜のケイトたちの言葉について考え続けていた。  ……実を言えば、彼らと出会った次の瞬間にはもう、彼らの言う作者(マスター)とやらの正体ついてはおおよそ見当がついていた。  だけどその彼が「物書きとして苦しんでいる」という理由が分からない。何か、ヒントでもあればいいのだけれど。  イライラしたように怜が言う。 「いいだろ別に、小説好きなんだから。変に気を遣わないでいいと思ったから、僕はお前らと居るのが好きなんだけど」 「でも小説はさ、」  千聖がなぜか俺をチラリと見た。その意味深な視線に俺がハッとするのとほぼ同時に、隆将が座っていた机を両手でバンと叩いた。 「いい加減にしろ千聖!」  初めて聞く隆将の怒鳴り声が教室の窓を揺らし、俺も千聖も怜も、一斉に肩を縮み上がらせた。 「人の趣味に一々口出すなよ! 何が気に入らないのか知らないけど毎日毎日、怜が可哀想だ!」  一気に捲し立てた後、隆将は急速冷凍されたようにいつもの穏やかな笑顔を貼り付け「すまん千聖、ついカッとなった」と言って先に帰ってしまった。  残された俺たち三人は呆気にとられしばらく固まっていたが、誰からともなく「帰るか」と言って教室を後にした。
/12ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加