第1話

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 次から次へとたくさんの人の名前が呼ばれる。  周りの家族はまだ一緒にいる人が大半だ。  (お母さん来るかな……)  私のフェアリーテール測定も近いだろう。  これだけは見ていて欲しい。  遠くから走ってくるヒールの音。  気になって振り返る。 「お母さん!」  声に出ていた。 「はぁ……はぁ……ごめんね。百望、遅っくなって……」  私のために走ってきてくれたのでろう。 「ううん!ありがと!」  そんな会話をしていると名前を呼ばれた。 「西田百望(にしだもも)さん」  はい、と返事をして測定器の前へ行く。  丸い球体に手を伸ばす。  青い光が私を包む。  光が収まるのと同時に測定してくれた人が言う。 「はい。お疲れ様。全員の測定が終わるまで自由にしていてくださいね」 「分かりました」  そう言ってお母さんの元へ戻る。 「おつかれ」  そう声をかけられた。  自由な時間。  お母さんが仕事に戻るまで話をする。 「きゃっ!」  近くから悲鳴が聞こえた。  全員が悲鳴の方を見る。  少し距離を開けて私たちの横だった。  1人の女の子を男の子が押さえつけ、刃物を突きつけている。  2人ともラピエルの制服を着ている。  その2人の前で赤い眼鏡をかけた1人の女の子が何かを唱えている。 「現れるは生まれし頃より外れ者とされし者。何時(いつ)しかその者、誰しも憧れし白鳥となりて空を飛び回る」  そう唱えた赤い眼鏡の女の子の手元には一冊の本があった。    その本から白い光が輝いた。  周りは手で顔を覆う。  けれど、私は見ていられた。  大きな1羽の白鳥がナイフを持った男の子を跳ね除けた。  すかさず、赤い眼鏡の女の子が捕まえた。  (カッコイイ……)  捕まえたのを見て、お母さんが歩き出した。 「美月!大丈夫?」  捕まえた男の子を拘束用の手錠を掛け、顔を上げた。 「大丈夫ですよ、学園長……それより、娘さんの傍に居てあげてくださいよ。こういうことをするのは、私たちの仕事ですよ」  そう言うと、赤い眼鏡の女の子は捕まえた男の子を別の生徒へ引き渡していた。 「お母さん……」  お母さんの腕を掴んで声をかける。 「百望?」  名前を呼ばれてなんて言うか考えた。  すると、赤い眼鏡の女の子が声をかけてくれた。 「あなた、学園長の娘さん?」 「え、あ、はい!」  慌てて返事をした。  すると、赤い眼鏡の女の子は笑った。 「ふふ。元気なんだね……ごめんね、さっきはびっくりさせたよね。でも、大丈夫だからね」  そう笑いながらいった顔は凄く綺麗だった。
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