第1話

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 前の人達について行くと、地下1階のフロアに入る。 「では、距離を開けてペアごとにフェアリーテールを見せあってね。フェアリーテールが使えない人は相手のを見ておいてね。」  その説明の後、周りが見せ合いをはじめる。 「百望、どっちから見せる?」 「美月からで」 「わかった。行くよ」  そう言うと美月は本を開き唱え始めた。 「花開くは美しき声を願い美しき花を咲かせし者。現れるは1度のみの命を持ち1輪の花の精と呼ばれし者。その者1輪の花と引き換え新たな(めい)を授ける」  唱え終わると1輪の大きな花が咲いて消えた。 「月見草?」 「おっ、よくわかったね。次は百望だよ」 「えっと、フェアリーテール出せるけど、維持できるか分からないんだけど……」 「大丈夫だよ、止めてあげるから」  美月はそういった。  大丈夫だろうか……。  私は本を開き唱える。 「目に見えるは可愛く優しき香りの家。2人の子供あり。その者たち1人の魔女に騙されし。家に入れば未来分からず。今そなたに訪れるはその未来となる。」  私が唱えると、消えるはずの家は消えずに残っている。  周りからは悲鳴が聞こえる。  見渡せば、周りにもフェアリーテールが消えていない人達が沢山いた。 「百望!自分に集中して!」  美月に言われて、家を見る。  本の中に戻るように願う。  けれど、家の扉が開く。 「だめ!」  家の扉が開けば美月が取り込まれる。  すると、美月は本を開き唱える。 「現れるは生まれし頃より外れ者とされし者。何時(いつ)しかその者、誰しも憧れし白鳥となりて空を飛び回る」  早口で唱えたはずなのに、1羽の白鳥が生まれ家に取り込まれた。  家の扉は閉まり消えた。  美月が駆け寄ってくる。 「百望!大丈夫?」 「ありがとう……」 「大丈夫って言ったでしょ?周りを見て」  そう言われ周りを見渡す。  ペアの先輩達が1年のフェアリーテールを止めている。 「第1の授業はこんな感じだよ。訓練場でのフェアリーテールは実践と同じ状況だから、フェアリーテールを制御できる1年はいないんだよね」
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