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「これだな?」
「うん! そう、それ」
夜半過ぎだがとてもじゃないが朝まで待っていられずに、ルナを連れて焔の部屋を訪ねた。幸い彼もまだ休んでおらず、すぐに話を聞いてくれた。
「なるほど。あの時ルナが淹れてくれたジャスミン茶か!」
焔はすぐに医師の鄧浩を呼び出して分析を頼んでくれた。
「夜分にすまぬな、鄧浩! 至急こいつの成分を調べて欲しい。もしかしたら茶葉とは別の何かが混ざっているかも知れんのだ」
鄧浩は焔付きの専属医だ。この邸の者たちの健康を管理してくれている頼れる男である。
「かしこまりました! お任せください」
鄧が茶葉を持って医室に帰るのを見送りながら、ふと思い出したように焔がつぶやいた。
「そういやあの時――俺は確か茶に口をつけなかったな」
ルナとのやり取りに気を取られていて、出された茶を飲まずに帰って来てしまったというのだ。
「カネ、お前はどうだ? あの茶を飲んだか?」
「ああ。そういえば俺は一気に飲み干しちまったな」
紫月が見つかったかも知れないという動揺で、喉がカラカラに渇いていたからだと遼二は言った。
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