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遼二とルナ
それから数日が過ぎたが、ルナは冰が帰ってくると進んで一緒にテーブルを囲むようになった。毎日特にすることもなく退屈なのか、次第に冰の帰りを待ちわびるような様子も見受けられるようになっていった。
冰もルナにはよく懐いて、近頃では学園から帰ると同時に『ルナお兄さんは? お部屋?』などと焔に尋ねるようになっていた。少し前までは、帰ると『白龍のお兄さん、白龍のお兄さん!』とまとわりついて来た子供が、すっかり成長して手から離れていくようで、焔にしてみれば一抹の寂しさをも感じる始末だ。ルナに宿題を見てもらう夕食前のこのひと時が楽しいといったような表情をする。ルナもまた、冰のみならず家令の真田や邸の使用人らとも日に日に馴染んでいき、先行きの明るさを祈るような気持ちで見つめる焔と遼二であった。
「さて――ルナ。今日からは寝所も俺と共にしてもらおうと思うが」
ある晩のこと――遼二がそう誘ったところ、ルナはわずか驚いたようにして瞳を見開いた。
「先生……じゃなかった、遼と一緒に寝んの?」
「そうだ。お前さんもそろそろここでの暮らしに慣れてきたろうからな」
嫌か? そう訊くとルナは薄く笑みを浮かべながらも少し寂しげな表情をみせた。
「嫌ってわけじゃねえけどさ……。ってことは、俺もいよいよデビューの時が近づいてきたってことだよね?」
ルナにとって教育係と寝所を共にするということは、イコール男娼としてのデビューの日が迫っていると理解したのだろう。
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