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「むろん坊主にとってあんたは親も同然だ。二人一緒に私の住まいに越して来てはくれまいか?」
老人にとってはそれこそ恐縮も恐縮な提案である。しばらくの間は返答すらままならずにいた。
「外と比べれば小さな街だが、そうは言えどこの城内も広い。通っている中学校までは少々遠くなろうが、坊主にはきちんと送り迎えをつける。逆にあんたはここからの方がカジノには近かろう。どうだ、意を汲んでいただけまいか」
「……は! それはもう……有り難いことこの上ないお申し出でございますが……あの子はともかくとして、この老いぼれめには過ぎたるご厚情でございます……」
確かにカジノの一ディーラーが皇帝と呼ばれる彼の住まいに同居などと知れたら、周囲からの嫉みややっかみも凄そうだ。
「ふむ――ではこういうのはどうだ。表向きは二人共我が邸の居住区内にある使用人たちが住む棟に越して来てもらい、坊主の方は私の手元で預かる。食事などの際は爺さんがここへ出向いてもらうというのでは――?」
焔は何としてでもあの冰を手元に置きたいようだ。黄老人にとっては有り難いことこの上ない待遇ではあるが、一方で何故にそこまでこの皇帝が自分たちを気に掛けてくれるのかが分からずに戸惑ってしまうのも実のところであった。
結局、焔の提案通り二人は皇帝居住区内に移り住むこととなり、冰は焔と衣食住を共にすることで話は決まった。黄老人には執事の真田らと同じ棟にある部屋が与えられ、いつでも冰に会えるといった条件である。冰の送り迎えは焔の側近である李と劉という男が責任をもって行なってくれるという。焔曰く、李も劉も信頼できる側近中の側近だそうだ。
それぞれの思うところはあれど、結果的にはこの城内で皇帝の言うことは絶対である。こうして焔と冰、そして黄老人の同居生活が始まったのだった。
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