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つまりこの男が言うことが事実であるなら、孤児――ということか。だとすれば、彼は紫月ではないということになる。
焔はもう少し詳しい事情を訊くべく会話を続けてみることにした。その間、遼二はその一挙手一投足を窺うことに余念がない。
「ではお前はこれまでその行商人の男と二人で暮らしてきたというのだな? 名は何という」
「名前? オッサンは馬鈴、俺はルナ」
「ルナ――だと? では亡くなった両親の名前は?」
「親父は程備、お袋は程杏だけど」
「程――とな。つまりお前さんは程ルナってわけか」
「そうじゃね? つか、オッサンからはルナって呼ばれてたから」
姓などとうに忘れた、そんなふうに言いたげだ。焔は質問を変えることにした。
「では両親が亡くなったのはいつ頃だ。原因は知っているか?」
「うーん、多分俺が三つか四つの頃じゃね? ガキだったし、よく覚えてねえな。列車の事故だったって近所のおばちゃんから教えてもらった記憶がある。その後すぐにアパート追い出されちゃってさ。行くトコなくて橋の下で寝泊まりしてたトコをオッサンが拾ってくれたらしいよ」
彼曰く、物心ついた時には既にその行商人と暮らしていたそうだ。
そこまで聞いて、焔も遼二も頭を抱えさせられてしまった。
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