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夕飯は冰もまじえて焔の邸のダイニングでとることとなった。
幼い冰は遼二とルナをチラチラと見やりながらも緊張の面持ちでいる。先程紹介はされたものの、いわば初対面も同然なので何を話していいか分からないのだろう。それでも気にはなるのか、遠慮がちながらもしょっちゅう視線を泳がせている。
ところが、意外なことにそんな冰に向かって自ら話し掛けたルナに驚かされることとなった。
「冰君――だっけ? 皇帝様の弟かなにか?」
話し掛けられた冰は唖然である。箸を口元に据えたまま、大口を開けてポカンとしながら絶句状態だ。焔と遼二もまた然りだった。
「うむ、この冰はな、城内でカジノディーラーをしている黄という爺さんの息子だ。といっても実の息子ではない。冰は両親を亡くしているのでな。隣に住んでいた黄の爺さんが面倒を見ていたそうなのだが、訳あってこの私が引き取ったのだ」
焔が説明すると、ルナは珍しくも微笑を浮かべながら『ふぅん、そう』と言って冰を見やった。
「お前、親いねえんだ? そんじゃ俺と一緒な」
そう言ってフっと笑む。
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