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「どうだ、カネ。あのルナだが――広東語はもちろんのこと英語も流暢のようだな。冰の宿題も難なく解いてやっているようだが、正直なところ学力という意味では一之宮と比べてどうなんだ」
「うむ、そうだな。紫月も俺のマネをして、ガキの頃から英語や広東語を学んでいた――というよりも日常的に会話の中に取り込んでいたからな。今、ヤツは広東語で俺たちと会話しているが他の数学やなんかも……」
そこまで言い掛けて、遼二はハタと瞳を見開いた。
「――そうだ! 何故今まで気が付かなかったんだ……! 日本語だ。ヤツが紫月ならば日本語も覚えているはず……」
記憶を失くしているのは確かであろうが、広東語も英語も流暢であるということから、もしかしたら言語や日常生活に関する部分の記憶は失っていないものと思われる。遼二はルナが日本語を覚えているかどうか確かめることにした。
「焔――、冰は日本語が話せるか?」
「ああ。あいつは元々日本人だからな。日本語と広東語、どちらも流暢だ」
ちなみに英語も流暢とのことだが、今はとにかく日本語である。焔と遼二は互いを見つめてうなずくと、
「冰、ルナ! 宿題はそこまでだ。そろそろ夕飯にしよう」
日本語でそう話し掛けてみた。
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