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「あ……れ? おっかしいなぁ……。日本語もしゃべれたんだっけ、俺?」
「う、うん……。ルナお兄さん、今もそれ日本語だよ?」
「あれぇ……? マジかよ。もしか俺って天才? なーんてなぁ?」
まるで天変地異かというような顔付きで頭を掻きながら唖然としている。
「きっとそうだよ! だってルナお兄さん、数学も国語も社会も……全部スラスラ解いてくれるもん! 絶対天才なんだよー」
冰は本心から感心している様子で、大きな瞳をクリクリと輝かせながら感動の面持ちでいる。そんな冰の側で、ルナもまたつられるようにして笑顔を見せるようになっていった。
「マジ……? やっぱ天才?」
「うんうん! 絶対天才!」
「はは! おめえ、ガキんちょのくせにおだてんの上手えなぁ」
その仕草、その愛嬌、すべてが紛れもない紫月そのものだった。
それ以降、無感情だったルナが次第に感情の動きを見せるようになっていった。やはり冰との触れ合いが功を奏したというのだろうか、焔にとっても遼二にとっても幸先の明るい兆しといえた。
もしかしたらこうして日々を重ねる内にルナが記憶を取り戻すかも知れない――そんな期待に胸が躍る。遼二は思い切ってルナと寝所を共にすることを考え始めるのだった。
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