遼二とルナ

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 正直なところ、ルナと寝所を共にする中で、実践という大義名分を掲げて抱いてしまうことは可能であった。だが、遼二にとってどうしてか情を交わすという一線が越えられずにいたのも、また事実であった。  深夜、すっかり深い眠りについたルナを眺めながらその頬に手を添えて軽く撫でる。ゆるりと髪を梳き、半身を起こした拍子にギシリとベッドが音を立ててもルナは起きる気配がない。  今ならば――軽く口づけるくらいでは目を覚ますこともないだろう。そう思い、更に身を乗り出して顔を寄せれど、何故だか心がチクリと痛んで唇を重ねることができなかった。  彼は紫月であって紫月ではない。だが、身体はまさしく紫月に違いない。  古傷の形もホクロの位置も、そして体つきも――。  それこそ自分と彼と、おそらくは彼の親くらいしか目にしたことがないであろう男の象徴も、寸分違わない紫月のものだ。  紫月とは想いを告げ合ってから幾度身体を重ねたことだろう。  かつて夢中になってこの身体を腕に抱いた。  だが、どうしてか唇を重ねることすら憚られるこの思いはいったい何だというのだろう。暗闇の中、遼二はそっとルナに添えていた掌を離すと、何もかもを忘れるようにただただ睡魔が襲ってくるのをじっと待ったのだった。
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