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「あいつは紫月であって紫月じゃねえ。身体はまさしく紫月だが、心はルナ――だ」
「……ふむ。つまり、てめえは一之宮の身体に一之宮の心が戻るまではあいつを愛せねえというわけか? それともルナという性質がタイプじゃねえとか――?」
「そうじゃねえ。俺が苦しいのは――ルナのことも可愛いと思えるからだ」
焔は驚いたように遼二を見つめた。
「……要は、てめえはあのルナに惚れたということか?」
「……ッ、そうかも知れん。いや、そうだろう。ルナが……あいつが毎日少しずつでも明るさを取り戻していく様子を見ていると……うれしくなる。ああして一生懸命に冰の勉強を見てやっている姿も、正直言って愛しいと思える。だが、俺が愛しているのは紫月だ……! 今の俺は……紫月を忘れてあのルナという別の人格に心惹かれ始めている。それが怖くて堪らねえんだ……」
両の手で額を抱え込んでは吐き出すように言う。まるで心の叫びの如くかすれた声を苦しげに潰す勢いでそう言う。
「――浮気」
「……え?」
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