遼二とルナ

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 しばしの後、ふうと深呼吸と共に(イェン)は言った。 「つまりはなんだ――こういうことか。おめえは理想とする環境の中で一之宮紫月という男を愛したいというわけか?」  その問いに、遼二は覆っていた掌を離すと涙に濡れた顔でハタと(イェン)を見やった。 「理想の環境……?」 「そうじゃねえのか? 鐘崎組に一之宮道場、側にはおめえの親父さんや組の若い衆らがいて、ちょっと歩けば一之宮の家があって――。そんな環境の中で一之宮が側にいてくれたら満足で安心できる。裏を返せば一之宮という一人の男を愛しているというよりは、そういった心地の好い環境の中でしか愛せない――俺にはそんなふうに聞こえるがな」  思いもよらなかった言葉に絶句――しばしの間、遼二は返答の言葉すら返せないまま(イェン)からも視線を外せずにいた。  あれだけ流した涙も瞬時に乾いてしまうくらいの衝撃が襲いくる。 「そ……んなことはねえ……。俺は……ヤツが、紫月が戻ってさえくれれば……環境など関係なく」 「ヤツを愛せるってか?」
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