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「……ッ、そんなことはできん! あいつは、ルナは……やっとここでの生活に慣れ始めたばかりなんだ。少しずつだが笑顔だって見せるようになってくれて……そんなあいつを全く別の環境に連れて行けば、せっかく取り戻せそうなあいつの笑顔を潰しちまうだろう。そんな惨いことはできねえ……ッ」
既にもうルナの虜か――そう思えるようなセリフだ。遼二に自覚はないのだろうが、彼があのルナを愛し始めているのは確かなのだろう。焔はまたひとつ小さな溜め息と共に遠目にいるルナと冰を見つめながら言った。
「カネ、一度その――ルナとか一之宮とかいう壁を取っ払ってみたらどうだ?」
「壁を……取っ払う?」
「お前の思うまま、感じるまま、どちらも大事ならどちらも愛してしまえと言ってるんだ。ルナの人格も一之宮の人格も、可愛いと思う気持ちのままに欲しいと思う気持ちのままに素直になって溺れちまえと言っている。とことん溺れて、例えそれがおめえの抱く理想の未来とは違ったとて、溺れた先に別の未来が描けるようになるかも知れんぞ」
なんといってもルナと紫月は同一人物なのだから迷うことはない、焔はそう言いたいのだ。
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