遼二とルナ

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「おめえが何をこだわってるのか知れねえが、ルナであろうが一之宮であろうが、おめえは何度出逢ってもあいつそのものに惹かれるようにできてんだ。悩むくれえならルナも一之宮も――二つの人格ごとひっくるめてとことん愛せばいい。簡単なことじゃねえのか?」 「ルナも紫月もひっくるめて……」 「そうだ。第一、ルナというあの名前だって女衒(ぜげん)が適当につけたのかも知れんが、元を正せば月――だ。一之宮紫月の月――だ。女衒(ぜげん)はヤツの本当の名を、紫月という名を知っていてルナとしたのかも知れん。それに――ここ最近のヤツを見ていると、ちょっとした言葉の節々に一之宮の性質が見え隠れしていることにお前も気付いているはずだ。だから余計にルナも愛しいと感じるんだろう」 「……(イェン)」 「ヤツは紛れもなく一之宮であって、それ以外の何者でもねえ。悩んでる暇があったら二つの人格ごと受け入れて、とことんてめえに素直になる勇気を持つことだ」  そうすれば自ずと未来が見えてくる時が訪れる。(イェン)の言葉に遼二はグイと涙を拭いながら、遠目にいるルナと冰を見つめた。  すると、ちょうど宿題が済んだのか、二人がノートを畳んでこちらに気付いたようだった。冰はうれしそうに手を振りながら『白龍のお兄さーん!』と言って満面の笑みを見せている。ノートを抱え、こちらへと駆け出す。  その姿を見つめるルナの瞳は穏やかで、時折クスッと笑むような仕草が見て取れる。
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