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「……心配だわ」
「心配って何が?」
キョトンとする幸に、ユミカは床に敷いてあるカーペットをパタパタ叩く。
「涌井さんのこと! それらしいこと言ってくるくせに、いい大人の男が幸みたいなイイ女を目の前に手を出さずに半年? ありえない!」
「それは彼が私を大事にしてくれているから」
「本当にそう? 進展しない幸との関係に、ついうっかり魔が差したら? 出かけた先で新しい出会いがあってときめいちゃったりしたら?」
うっと、幸が息を呑む。
ユミカは幸を試す様な目つきで見た。あえて挑発的なことを言っている。親友にもっと恋に貪欲になってもらいたい! という親心ならぬ親友心からだ。
そんなユミカに幸は困惑して眉を寄せる。
「ユミカ、変わったんじゃない? 高校の時はこういう話苦手だったのに」
「女は結婚したら生まれ変わるの。あと、子供を産んだ時もね」
「二回も?」
幸が目を丸くする。
「確かに、恋愛のことで私が幸にあれこれ言うようになるなんて、時の流れを感じるよね」
ユミカはしっかりものの幸に手を引かれるように送った高校生活を振り返りしんみりとする。
そうだ、時が流れるのは早いのだ。だったらもたもたしていてはいけない。
「ねぇ、幸。行ってみたら」
カーペットに子供を寝かせたユミカが身を乗り出して幸の手を握る。
「え?」
と、見開いた幸の目を見つめてユミカは言った。
「涌井さんを追いかけるの! 行き先、聞いてるんでしょ」
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