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間違えた?
涌井が昨夜パソコンの画面を見ながら書きつけたメモを頼りに行くと、そこは二階建ての古いアパートだった。
目当ての部屋は二階の奥から二つ目。
ドアをノックするといきなり外側にドアが開いてぶつかりそうになった。
出てきたのは小学校高学年くらいに見える少女だった。内側からドアノブを握ったまま立っている。
「こんにちは、えっと、お母さんいるかな」
と、涌井は彼女に聞いた。
すると涌井のことをじろっと見た少女が、
「どんなご用ですか」
と、聞き返してきた。
(ご用?)
涌井は驚いた。用じゃなくてご用なんて言葉を使うとは。しっかりしているというかマセているというか、近頃の小学生はこうなのか。
(幸さんとの間に女の子が生まれたら俺はすぐやり込められそうだ)
涌井は思わず今日一人置いてきてしまった愛しい恋人の顔を思い浮かべた。
「エバーグリーンという花屋の涌井と言います。購入してもらった商品のことで伺いました」
と言うと、少女が目を見開く。
「嘘、本当に来た」
ぼそっと言われたのでよく聞き取れなかった涌井が、
「え?」
と、聞き返すと、
「千秋どうしたの」
と、母親だろうか、奥から女性の声がした。
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