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────「ねえ、相沢さんって石田くんと幼なじみなの?」
お昼休み、隣のクラスの女子が会いに来てくれたと思ったら、内容はそれだった。
この質問はたまにある。
その度に私は気まずくなって苦笑して、「家が隣同士だから」と濁していた。
「石田くん紹介して」
「今度カラオケ石田くん誘ってみてよ」
そんなふうに頼まれても、とてもじゃないけど『任せて』なんて胸を張れない。
だって賢人、いや石田くんとは、もうまともに話せる間柄じゃなくなった。
「あ、来たよ」
「石田くん今日もイケメン!」
廊下を通り過ぎる彼に、周りの女子達が釘付けになっている。
焦げ茶色の髪に、切れ長の瞳。
夏服の半袖シャツが涼しげで、爽やかなイケメンだ。
屈託ない笑顔は男女問わず虜にして、どんどんファンを増やしている。
「いいな。幼なじみなんて」
「いろんな石田くん見放題じゃん」
そう言われても、やっぱり苦笑い。
「今は関わりないから」としか答えられなかった。
人気者の石田くん。
確かに幼い頃はたくさん遊んだし、ずっと一緒だった。
だけど今は。
ふいに彼の視線が私のクラスに向けられ、咄嗟に視線を落とす。
きっと彼は、私が隣のクラスにいることすら眼中にないだろう。
中学、高校と、進学する度に彼は成長していって。
頭も良く人付き合いも器用な彼は、どんどん遠い存在になってしまった。
見た目も中身もパッとしない私は置いてけぼりになったような気がして、彼に対して苦手意識が芽生えるようになってしまった。
中学生の途中までは、毎日一緒に帰るくらい仲が良かったのに。
『真名!』
『賢ちゃん』
あんなふうに呼び合って笑い合えた日々には、もう二度と戻れない。
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