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夏休み編前半『たまには休みも必要でしょ?』
『…………暇、だなぁ』
これまでに沢山の難題を超えて、僕達は今夏休みという名の長期休暇に入っている。因みに今僕は、ソファーに寝転がりながら天井を眺めている。宿題はどうしたのか、だって?そんなの8割は終わらせている。八割程度終わらせていれば後は何かアクシデントが起きても別に大丈夫なのだ。
『何かすることと言っても…特に浮かばないしな。』
カナ『そんなあなたの為に、これをプレゼント!』
なんで僕の部屋にいるんだろうなコイツ。
カナ『おやおや、何故私がここにいるのかわからない、といった表情だね!』
『それもそうだが、お前の口調どうした?』
カナ『私は元々こんな口調だったでしょ?それよりさ、鈴君さ、今暇なんでしょ?丁度誘おうと思ってたんだよね、来ない?』
『…何に?』
カナ『ふっふっふ…聞いて驚き給えよ…』
『勿体ぶんないでいいからはよ教えろ。』
カナ『私じゃなかったら嫌われてるよ?』
カナ『…ごほん。ずばり、海水浴!』
…束の間、沈黙が流れる。そして僕はやっとのこと口を開き…
『…海水浴って、あの、海?』
カナ『そう、海。』
『イッツアオーシャンビュー?』
カナ『ビューはまたちょっと違くない?』
そうして、僕達の一風変わった夏が幕を開けた。
カナ『海、だぁ────!!!!!!!』
『やかましい。』
お決まりのチョップを決めながらも、僕はそのイベントに対しかなりワクワクしていた。
『さて、とりあえずテントでも立てる……あれ?』
持ってきておいた組み立て式テント二個とハンモックそしてetcは一体どこへ?
愛奈『っしゃあ男共急いで組み立てるぞ!』
『押忍!!!!』
そこには、既に水着に着替えていた愛奈がそこにいた。
『何してんのお前ら?』
愛奈『いいかい、鈴君。』
最近君呼び流行ってるのかな。
『はい。』
愛奈『私達学生にはね……長期休みというのははしゃがなければいけない義務があるんだ。』
『はぁ……』
愛奈『そこでね、こんな愉快なパーティーが集まってさ、遊ばないと損ってもんじゃない?』
『まぁ愉快なのは否定しないな。』
愛奈『それにさ、このまま海ではしゃがないで、もし私達が大人になって、あの時遊んどけばよかったと思って自分の子供と海に行こうと誘うとするじゃん?』
愛奈『もしそうなった場合は、絶対子供のテンションと大人のテンションは違う!わざわざ早朝景色を見に子供を連れ出す大人には私達は絶対なってはいけないんだよ!』
『何お前そういう経験でもしたの?』
なんか人生二週目みたいな発言してるなぁと感じつつ、とりあえず僕は浜辺の方を見てみる。
『にしても、ここの海綺麗だな。砂もなんか普通の色とは違うし、あとそこまで磯の香りがしない。』
愛奈『そう、これは我らがフランちゃんを通じて咲夜さんにお願いして貸し切りにしてもらったのだよ!凄いと思わない!?』
『はーすごい……っていうかあの屋敷の連中こういう外の世界にも関わりあったんだな。』
愛奈『私も驚いたよ。凄いね権力の力って。』
『まぁ、前座はこれくらいにして……』
『遊びますか!』
そして僕らはその海に飛び込む。因みに浮き輪はある。
いや別に泳ぐのが苦手ってワケじゃないのよ。たださ海はゆっくり浮かんでたいじゃん?それにさ僕は海は泳ぐ派じゃなくて歩く派だしさあぁ何言ってんだろう僕。
フラン『あれ、鈴は泳がないの?』
『イヤボクハベツニオヨゲナイワケジャナクテネチガウンダヨコレハ。』
フラン『そ、そうなの……?』
『そうそ……ってお前、海に入っても、大丈夫なのか?』
フラン『うん。私みたいな吸血鬼は水とかが苦手ってよく言われているけど、それはあくまでも一つの話。確かに弱体化はするけど、入れないって程じゃないんだ。まぁ日光はてんでダメなんだけどね。』
『へぇ……案外、どうにかなるもんなんだな。そういうのって。』
フラン『まぁ、大昔の人間だってさ、電気を扱うなんてできなかったワケじゃん?それに今はギネスなんちゃらとか言って、常識からじゃできないことを成す人間もいる。そういうのと同じように、全部が全部同じで、いつまでも同じっていうのは、ないんじゃないかな。』
『深いねぇ。』
フラン『そうだねぇ。』
『あ、そういえば屋台でかき氷とか売ってたから後で食べるか?』
フラン『食べるー!』
うん。やっぱり久々にこの和む感じがとても心に染みる。
最近はずっと忙しかったからできてなかったけれど、やはり偶には、癒やしの接種も必要なのだ。
しかし、そんな時間も無情にも過ぎていき───……
カナ『第一回!スイカ割り大会―――!!!!』
その声と同時に、拍手が響き渡る。皆結構乗り気のようだ。一同しばらく騒いでいたが、白雅先生が手拍すると、皆静まり返り、そちらの方を向いた。
白雅『じゃあルール説明するぞー。』
先生は胸にかけているホイッスルを鳴らしながら、そう言った。
『…なんで先生ここにいるんだ?』
フラン『さぁ?先生も暇だったんじゃない?』
『そんな気楽なもんかね、教師って。』
そして僕達が先生の方を向いたら、先生はカンペのようなものを取り出して、それを読み上げる。
白雅『えー…、まぁ別に特にルールなんてない。普通のスイカ割りだ。ただ、一位には豪華賞品があって、最下位には罰ゲームがあるかもしれない。』
『罰ゲーム……?』
その瞬間、一同がざわめき始めた。ただそれも構いなく先生はカンペを読み続けた。
白雅『えー、一位には、この無料焼肉券が贈呈される。そしてそれがあんまり嬉しくないという奴は、最下位を自由にしていい券だ。パシリでも奢らせるのでもなんでもいいぞ。』
『なん……だって………!?』
『おいおいマズいな……』
駄目だ。これは嫌な予感がする。こんな人間の皮を被った魑魅魍魎共にそんな券をあげたら……ほらもうとんでもない顔しちゃってるよこの子達。めっちゃ悪い顔しちゃってるもん。
『……フラン?』
僕がそう尋ねると、フランは身体が一瞬跳ね上がって、その後頬を染めたままこちらを向いた。
フラン『え、な、何?どうしたの?』
そう言うフランは、とんでもなくソワソワしていた。
『めっちゃ悪い顔してるよお前。』
フラン『い、いやそんな顔……してるかも。』
『だろうな。』
さて……別に一位に関してはどうでもいいのだが、問題は順位を決める方法だ。ただ、この流れからすると……
白雅『あ、そうそう。時間はこのタイムウォッチで時間を測って、スイカを割るのが一番早かった奴が一位だ。』
だろうなと、内心僕がツッコんでいる間にも、勝負は既に始まっているらしい。全員の目つきが、先程より明らかに変わっている。
カナ『ねぇ、これってさ。焼肉券じゃなかったら最下位の人をなんでもしていいんだよね?』
愛奈『うん、確かそういうルールだったよ。』
カナ『っていうことは、私が一位をとって、鈴君を最下位にするよう仕向ければ……』
なんかどこかから不穏な言葉が聞こえた気がする。
『さて、と。それじゃあ僕もやろうかな……』
白雅『あ、鈴。ちょっと待て。』
そこで、白雅先生に引き止められてしまった。
『どうしたんですか?』
と、先生に聞いてみると、先生はこう返した。
白雅『お前は審判役な。』
そう言って、先生は僕の手にレフリー用の旗とストップウォッチを渡した。
『え?』
白雅『じゃあ、そういうことで頼むぞー。』
『いやいやいやいや待ってくださいよ!なんで僕が審判役なんですか!?』
白雅『なんでってそりゃあ……このメンバーの中でお前が一番反射神経とか高いんだし仕方ないだろ。』
『いや先生がやればいいじゃないですか!僕より身体能力高いでしょう!?』
白雅『あ〜……先生は、これから宿の予約をしなければならないんだ。』
絶対昼寝する気だこの人。最低である。
カナ『待ってください、先生!』
『カナ!?』
カナが、僕の横に立って真剣な顔で先生に抗議する。
カナ『鈴君がいないとなると、私はこのイベントに参加する気が全く起きません!なので、レフリーは先生がするべきだと思います!』
『なんか色々おかしいけどその調子だカナ!』
白雅『んーそう言われても…折角の俺の昼寝タイムが……』
もう昼寝タイムって堂々と言っちゃったよこの人。
白雅『わかった。じゃあこうしよう。』
そう言って、先生は人差し指を突き出して―――
白雅『もし一位を取ったものは、ここにいるメンバー全員の誰か一人を指名できることにする。ヨシ!』
『ヨシちゃうわ阿呆!』
思わず変なエセ関西弁が出てしまったところで、先生は颯爽とどこかへ消えてしまった。
カナ『さて、それじゃあ……』
そう言ってカナは笑みを浮かべながら拳を突き上げ、こう言った。
カナ『始めるとしようか、闇のゲームを!!!』
そうして、僕にとっては何のメリットもないゲームが始まってしまうのだった。
奈月『さぁ始まりました第一回スイカ割り対決!』
マイクを持ちながら、奈月は張り切った声で言う。
奈月『この競技は、どれだけ早くスイカを割ることが出来るのか、といったものです!ルールは先程説明した通り、あちらの審判の鈴君が旗を振り下ろした瞬間、スタートです!勿論、参加者には目隠しが着用されます!』
奈月『実況は私、二年生の奈月と!』
妖夢『本日はよろしくお願いします。』
奈月『解説は学園長の魂魄妖夢さんに来てもらいました!』
『わざわざ来るんだな妖夢さん。』
フラン『あの人真面目そうに見えて結構ノリ良いからね。』
因みに僕はもう審判役なのは受け入れた。これ以上抗ってもどうしようもないのだ。
奈月『さぁ、記念すべき初めの人は!この人だ―――っ!!!』
奈月『エントリーナンバー1!実は最近、深夜に一人カラオケをすることにハマっているらしい、氷さんです!』
氷『ちょっとそのこと誰にも言ってないんだけど!?』
奈月『因みになんとわざわざ一人カラオケをする為に自身の部屋を防音室を改造したようです!』
妖夢『凄いですね。私もそれぐらい熱中できる趣味を見つけたいものです(棒読み)』
氷『止めて!!!!!!!!』
奈月『さぁ、からかうのはこれくらいにして、いよいよ試合が始まります!』
氷は目隠しをつけられ、定位置に立たされる。10mあるかないかぐらいだ。大体そして僕は旗を振りかぶり、次の瞬間ー……
『よーい……スタート!!!』
その時、氷は異常な速度で、地面を蹴った。サンダルなのにも関わらず。舞い起こった砂埃が愛奈の目に入り、とんでもない悲鳴をあげている。
だが目隠しをしている氷がそんなことを知る由もなく、五秒足らずにスイカを割ってみせた。
奈月『終了―――ッ!さぁ、タイムの方は!?』
『えー……3.26秒ですね。』
奈月『おぉ────ッと!!!!初っ端からとんでもない好記録が出たぁ───っ!!!』
妖夢『すごい速さですね。あの動き、剣術を習っていた証拠だと思います。』
奈月『さぁ、序盤から大番狂わせ!これを超える者はいるのかー!!?』
なんでもいいから早く終わらせてほしい。
愛奈『目がぁーっ!目がぁーっ!!』
『何してんのアイツ?』
そうして愛奈の顔面を水に浸した後、またそのゲームが始まった。
奈月『さぁ少しアクシデントがありましたが、続いてはこのひとです、どうぞ!』
そしてその場に出てきた者は……
カナ『さぁ、ちゃっかり優勝を頂くとしようかな!』
『はい敗けろー。』
カナ『酷くない?』
奈月『エントリーナンバー2!その見た目のあざとさに惑わされるな!鈴君のストーカーを続けて幾十何年!その頭脳に抱える鈴君の情報はいざ知らず!世紀の大変態、カナ―――っ!!!!!』
妖夢『一体何を考えているのかわかったものじゃありませんね。』
一通り紹介が終わった後、カナも定位置に移動して、僕が構える。そして先程と同じように………
『よーい……スタート!』
その瞬間、カナは先程の氷より更に速いスピードで地面を蹴り、流れるようにスイカを割った。
奈月『す、すごい速さでしたが……結果の方は────!!?』
『えっと……1.03秒。』
その瞬間、観客席から歓声が響き渡る。いやいつの間に用意したの?
カナ『ふっ。一位いただき。』
奈月『でました、一秒台───!!!!』
妖夢『これは…異常ですね。行動原理もその速度も。』
奈月『世が産んだ人間兵器!一体どういう思いが彼女にバフをかけたのかはわかりませんが、恐るべき速度です!』
妖夢『我が生徒ながら末恐ろしいです。』
本当に誰でもいいからコイツの記憶を超えてくれ。
奈月『…さぁ、このスイカ割り大会もクライマックス!ラストは二名となりました!』
妖夢『どの選手もとても早かったのですが、それでもカナさんの記憶には届いていません。』
アギト『異常だよなアイツの速度。』
『いやお前手抜いたろ?』
アギト『言いがかりはよしてくれ、俺はちゃんと正当にやったつもりさ。』
『嘘つけ、お前だったらその能力使って一瞬で移動できたんじゃないか?』
アギト『おいおい、忘れちゃいないか?俺の能力は見たものと位置を入れ替える能力だぜ?目隠しされてちゃ使えないんだよ。』
『確かにそれはそうだが……でも、身体能力でも勝てただろう?』
アギト『さてさて、なんのことやら。』
『コイツ……。』
奈月『さてさて、それではやって参りましょう!次の参加者は、こちらだー!!!』
奈月『ナンバー41、その可憐な見た目からは想像もできない身体能力!今では学園最強の一角とも謳われており、鈴君がつけたあだ名はヤン巫女でございます!』
霊夢『本当にこのあだ名良くないと思うのよね。』
『仕方ないだろピッタリだったんだから。』
そして霊夢は定位置移動した後に、軽く息をついて、ステップをする。
『それじゃあ、よーい……スターt、』
その瞬間、突風が起こった。僕が言い切る前に霊夢は地面を蹴り、焦げ跡がつく勢いでスイカを両断した。
その勢いは凄まじく、70m先の海を両断していった。
奈月『えっと……何が起こったのかよくわかりませんが、タイムの方は……』
『…0.21秒。』
霊夢『少し、力んじゃったかもね。』
その瞬間、今までにないレベルで歓声が響き渡った。
奈月『こ、これは……!疾いというか、そんなレベルじゃありません!というより、威力が凄まじい!海が両断されてしまった!』
妖夢『圧倒的としか、言いようがありませんね。』
奈月『あまりにも早かった為、VARが入りましたが、ギリギリ鈴君がトを言った瞬間に動いています!カメラに写ったのが不思議なレベルです!』
『……お前、もしかして祓い棒使ったか?』
霊夢『あのねぇ、あれはそこら辺で拾ってきた木の枝とは違うのよ。こんな一行事に使うワケないじゃない。』
『…で、本音は?』
霊夢『本当は焼肉券かかってるんだし祓い棒使いたかったわ。』
『現金め。』
霊夢『守銭奴と言ってくれるかしら?』
『多分それ意味違うぞ。』
奈月『さぁ、次がラストです!正直、これを超える記録は出てこないと思っているのですが……それでも、最後まで何が起こるかわからないのがこのスイカ割り大会!最後の参加者は、この人だーッ!!!!!』
奈月『鈴君の恋人兼皆の頼れる妹枠、見た目の天使と中身の悪魔は表裏一体!フランちゃんだぁ――!!!!!!』
妖夢『先程の記録がとんでもなかった分、恐らく極度のプレッシャーに晒されているでしょうね。』
フラン『ふぅ、緊張してきちゃった。』
『…なぁフラン、大丈夫か?転んだりするなよ?』
フラン『私は幼稚園生じゃないんだよ、鈴。それに大丈夫、私に考えがあるから。』
『まぁ、怪我しないようにしろよ。』
フラン『うん、任せといて!』
そしてフランは定位置に立って、そして深呼吸をする。
『よーいー……スタート!』
簡潔にまとめると、その瞬間、爆発が起こった。
奈月『……え?』
妖夢『……うん?』
霊夢『は?』
カナ『WTF?』
全員、何が起こったのか理解できていない様子だった。
ただ一人、フランは拳を空に付け上げていた。
『えー、記録、0.0314秒。』
フラン『やったー!一位だ!』
霊夢『ちょぉーっと待ちなさい!おかしいでしょ!』
『霊夢がキレた、乱闘だ!取り押さえろ!』
霊夢『大体おかしいでしょ!?棒で割ってないでしょーが!』
フラン『え?いやだってほら、割れてるじゃん、スイカ。』
そう言って、フランはぐちゃぐちゃに破裂したスイカを指差す。
霊夢『爆破させただけでしょーが!不正よ不正!』
そうして霊夢の抗議により……
『えー、それじゃあ霊夢の抗議により、フランの割り方(?)について学園長の妖夢さん、判断をお願いします。』
独特な緊張感が、その場の空気を埋め尽くす。
今この場がデスゾーンになるかどうかは、彼女の一言によって変わるのだ。
妖夢『……無罪!!!』
霊夢『クソぉっ………!!!!』
霊夢が膝から崩れ落ち、地面を悲しそうに叩く。哀れである。
奈月『さて、優勝が決定したところで、優勝者のフランさん、今のお心境はいかがでしょうか?』
フラン『えーと……はい。この勝利は、私だけのものではなく、皆のものだと思います。』
奈月『素晴らしい回答ありがとうございました!』
『いや皆って誰だよ。』
奈月『さぁ、優勝者はフランさんです!そして優勝者には、焼肉券と指名制のなんでも券が譲渡されます!フランさんは、どちらにしますか?』
フラン『えーと私は……なんでも券で!』
奈月『わかりました!それでは、誰を指名にするつもりでしょうか?』
フラン『えっと……私は、鈴君を指名します!』
その瞬間、謎の歓声が響き渡る。いや本当に謎だ。
奈月『わかりました!それでは改めてフランさん、優勝おめでとうございます!』
奈月『そして鈴さん、指名された今の気分はどうでしょうか?』
鈴『めっちゃ理不尽感じてますしフランじゃなかったらキレてます。』
…そうして、このハチャメチャな海水浴は終わりを迎えたのだ。
『…にしても、お前は僕を指名したけど、一体何に使うんだ?』
帰りのバスで、僕達は話し合っていた。バスに乗っている人達は海の話で持ち切りだったが、一部とんでもなく闇のオーラを放っている人物たちがいた。
後ろをこっそり覗いてみると、霊夢がものすごい負のオーラを放ちながら、一人ぶつぶつ呟いている。そんなに焼肉券が欲しかったのだろうか?最早霊夢自身が怨霊のようになっていて、除霊されそうな方である。
フラン『えっとねー、それは、今は内緒!』
『……あんまりキツめのは止めてくれよ?』
フラン『そこら辺はちゃんと考えるから大丈夫!』
フラン『あ、ほら着いたよ!今日泊まるホテル!』
バスの窓から、そのホテルが見えた。
『…デカくないか?』
フラン『うん、これも咲夜が取り寄せてくれたんだけど、0の桁がびっくりする程多かったよ。』
『そうか……だとするなら、』
そう言って霊夢の方をチラ見すると、今度はバスの座席からホテルを凝視していた。少し怖い。
『…あれは少し、放置した方が良いのかもしれないな。』
フラン『そうだね、私も今喋りかけたら情緒がどうなるかわからないし。』
そして僕達はバスから降り、そのホテルへ向かう。今日は一日で色んなことがあったから、ここではゆっくり休みたい。と、僕は切実に思うのだった。
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