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名ばかりの貴族だと、ヴェルディアナだって理解していたのだ。その所為で周囲からバカにされていたとしても、仕方がないことだ。そう考え、今までずっとあきらめてきた。しかし、今回のことはヴェルディアナ自身でも予想外もいいところで。
(さすがにこれはないでしょう⁉)
ヴェルディアナはそんなことを内心で叫びながら、硬直していた。
ヴェルディアナの目の前には優雅にお茶を飲み、自身に微笑みかけてくる一人の――少年。彼は青色の乱雑に切られた短い髪と、鋭く吊り上がった青色の目を持っていた。成長すれば顔立ちからしてかなりの美丈夫になるだろうと予測できる。
そんなこの少年はヴェルディアナの婚約者だ。丁寧で優しい。容姿もいい。まさに、パーフェクトに近い人。……ただ一点を除けば、だが。
「ヴェルディアナ嬢はとてもお美しいですね。俺、貴女のことが大好きです」
そう言って微笑む彼に、ヴェルディアナはぎこちない笑みを向けた。
ヴェルディアナの婚約者となったのは、リベラトーレ・カザーレという少年。名門侯爵家カザーレ家の嫡男。ちなみに、彼は今――八歳。十五歳のヴェルディアナからすれば。
(七つも年下の男の子と婚約しろって、いったいどんな無茶ぶり⁉)
目の前で優雅に微笑むリベラトーレを見つめ、ヴェルディアナは心の中で大絶叫をしていた。
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