本編 第1章

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 ★☆★  ここは世界でも有数の大国ロンバルディ王国。他国よりも魔法の文化が著しく発展しており、それでもなお魔法の発展に力を尽くしている。そんなこの王国では、王国が認めた優秀な魔法使いは国が所有する六つの研究施設のどこかに所属し、そこで国のために魔法を使い研究するのが決まりだ。  もちろん、研究施設に所属することにメリットはある。ぜいたくな暮らしと名誉を手に入れることが出来るのだ。そのため、誰もが王国に認められる魔法使いを目指す。平民、下位貴族、高位貴族。誰もが王国に認められようと日々魔法の鍛錬に明け暮れる。  そんなロンバルディ王国に生まれたヴェルディアナは平凡な娘だ。いや、一つだけ平凡とはかけ離れたところがある。それは、ヴェルディアナが名ばかりの伯爵家、バッリスタ家の令嬢であるということ。  バッリスタ家は元々優秀な魔法使いの家系であったものの、いつしかその力は衰えていくように。今では栄光の時代の見る影もなく、社交界では『残りかすの伯爵家』と呼ばれているくらいだ。しかも、その呼び名に拍車をかけるように貧乏だった。それはもう、いつ没落してもおかしくないくらいには。 「……本当に、どうしてお父様とお母様は……」  今から数日前。ヴェルディアナの両親は興奮したように「ヴェルディアナに求婚が来たよ!」と言ってきたのだ。  それはまさに青天の霹靂。ヴェルディアナが今後一生ないであろうと思っていたことだ。  ヴェルディアナには三つ年下の弟がおり、絶対に嫁に行く必要があった。だが、こんな名ばかりの伯爵家の令嬢など誰も娶ってくれない。そう、思い込んでいた。  両親の話を聞いた時、ヴェルディアナは絶対に相手は訳ありだろうと思った。こんな名ばかりの伯爵令嬢を娶りたいというのだ。きっと、両手では足りないほどの愛人を囲っている、親よりも年上の貴族の男性だろうと想像した。しかし、いざヴェルディアナが対面した婚約者はどうだろうか。まさかの、ヴェルディアナよりもずっと年下。あえていうのならば、ヴェルディアナの弟よりも年下だった。
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