本編 第1章

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 そして、婚約者同士となったヴェルディアナとリベラトーレの二度目の対面の日。 「ヴェルディアナ嬢は、とてもお美しいですね。俺、貴女と婚約出来て本当に幸せです。一生分の運を使い果たしてしまったかもしれません」 「……そ、そう言っていただけて、光栄、です、わ」  そんな会話を交わしながら、ヴェルディアナは引きつった笑みを浮かべていた。  ちなみにではあるが、ヴェルディアナとリベラトーレの婚約はまだ正式なものではない。このロンバルディ王国では、貴族同士の婚約は社交界で発表をしてから正式なものと呼べるためだ。もちろん、二人は書類上ではすでに婚約者同士である。また、正式な結婚はリベラトーレが十八歳を迎え次第することになっていた。 (今から十年後だなんて、絶対に冷めているわよ……!)  今でこそこんな風にヴェルディアナに愛を告げてくれているリベラトーレだが、きっと若い女の子の方がよくなるに決まっている。確かに今のリベラトーレは八歳だ。年齢的に、年上の女性にあこがれる時期かもしれない。だからこそ、今のリベラトーレはヴェルディアナに愛を告げてくれている。そう、ヴェルディアナは思っていた。  それに、よく八歳がこんなことを言えるなぁとも思っていた。一体、彼はどんな育ち方をしたのだろうか? 「俺、絶対にいい男になりますので、期待していてくださいね! 絶対に、ヴェルディアナ嬢に似合うような男になります!」 「……あ、ありがとう、ございます」  リベラトーレは目をキラキラとさせながらそんなことを言う。  だが、ヴェルディアナからすれば一体どこでそんな言葉を覚えてきたのだと問いたかった。が、すぐにそういえばカザーレ侯爵夫妻はとても仲がいいと噂で聞いたことがあるなぁと思います。きっと、常々両親がこの調子なのだ。そうだとすれば、こんなにも口が上手いのもある意味納得である。 「で、ですが、リベラトーレ様。結婚する頃になったら、私はもう二十五歳ですよ?」 「それが、どうかしましたか?」 「いえ、リベラトーレ様にはもっと若い女の子の方がお似合いかと……」  遠回しに「私じゃ似合いませんよ~」とヴェルディアナは伝えたつもりだった。
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