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しかし、リベラトーレは「ヴェルディアナ嬢ならば、きっと十年後もお美しいですよ!」と斜め上のことを言うだけだ。それを聞いた時、ヴェルディアナは確信した。
このまま婚約の解消を遠回しに告げても無駄だと。そもそもな話、ヴェルディアナの父も母もこの婚約を喜んでいるのだ。そのため、下手な断り方は出来ない。身分も年齢も、なにかも釣り合っていないけれど。そう、思ってしまう。
「俺、今必死に魔法の訓練をしているんです! 将来、王国に認められる魔法使いになるんですよ。父様と母様みたいに!」
その言葉を聞いた時、ヴェルディアナはふっと思い出した。カザーレ侯爵夫妻が、夫婦ともに優秀な魔法使いであるということを。
夫婦で共に優秀な魔法使いであるということは、その血を受け継いでいるリベラトーレも将来有望なのだ。……本当に、どうしてこんな名ばかりの伯爵令嬢に求婚してきたのだろうか。本当に、父はどんな手を使ってこの婚約をもぎ取ってきたのだろうか。そう、思ってしまう。
「それは、立派な目標ですね」
だが、ヴェルディアナからしてもリベラトーレの向上心は素晴らしいものであり、好ましいものだった。そんな風に捉え、ヴェルディアナは少しだけはにかみながら自分の気持ちを伝える。そうすれば、リベラトーレは顔を真っ赤にしていた。やはり、これくらいの年の男の子は年上の女性にあこがれるのだろう。
(大人になったら年の差なんて大したことないかもしれないわ。……だけど、これくらいの年齢の時はねぇ)
本当に、頼りがいのあってたくましくて筋肉ムキムキの男性が良いなぁ。ヴェルディアナは内心でそう思うものの、決まったものは仕方がないのだ。たとえ、社交界で「まだ十にも満たない少年と婚約した」とささやかれ、嘲笑されることになったとしても。仕方がないのだ。それくらいならばヴェルディアナでも耐えられる根性があるだろう。
(あ、この紅茶美味しい)
が、それよりも。さすがは王国でも名門に名を連ねる侯爵家と言うべきか。ヴェルディアナの前に並べられた紅茶もお茶菓子も、一流のものであり大層美味だった。庭もきれいに整えられており、屋敷などはきらきらと輝いて見えてしまう。庭には雑草が大量に生え、屋敷はボロボロなバッリスタ家とは大違いだ。
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