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︎︎神無月はくっくと笑いながら続ける。
「実験動物達の動きを見ていたら……人間に使おうだなんて思う方がどうかしてる。これ以上実験なんてさせられない」
「でも自白剤なんて……」
「自白なんて、喋りたい欲望を解放させればいいんだ」
思い返せば最初に水晶で見た時に山本は黒い粉を持っていた。神無月はその粉薬を珈琲の中に少量だけ混ぜたのだろう。
「なぜそこまで……」
︎︎薬を勝手に食物に混ぜれば傷害罪を問われるはずだ。
「……俺も実験と称して投与されたことがある。この資料はその時のデータだ」
盗まれた資料を神無月は拾い上げる。
「確かに催淫作用はあったよ。俺の様子は山本に撮られていたからね。流石に珈琲に混ぜたんじゃ量は十分じゃなかったか」
神無月の目が悔しさで一気にくもる。
「俺を怖がらなくていい。あの薬は洗脳するだけなんだ」
言い聞かせるように神無月は何度か洗脳だと繰り返し、ニコりとはりつけた笑顔をした。
「それで、どこにかけ合うつもりだい。言っとくけど上層部は既に裏社会連中からの莫大な資金に目がくらんでこの件は黙認してるよ」
神無月の変わり身の早さにおののきつつも、イレブンは持ち直す。結局は取引だ。お互いの弱点は見ないふりをしようという。
「怪盗は警察や探偵関係の友人が沢山いるんです。特に正義感に溢れた輩が。ですよね、トゥエルブ?」
「うぃ〜!」
トゥエルブは手をひらひらとふった。
「……未成年飲酒で捕まるんじゃない?」
神無月の言葉に格好をつけたイレブンは気まずくなりメガネをかけ直す。
「あいつから研究をとりあげる! ついでに薬も知らしめる!」
トゥエルブは携帯を取り出し、アドレス帳の一番上に電話をかけた。呑気な女性の声が響く。
「こちら奥真探偵事務所……ってトゥエルブ!?」
「あとは探偵と警察にまかせる!」
「え、なに? ︎︎まさか酔って……?」
︎︎イレブンは電話をとりあげる。
「怪盗が今から探偵事務所に向かいます! なら警察を呼ばなきゃいけないんじゃないですか!?」
イレブンは騒ぎ散らす探偵を遮って電話を切った。
「さあ、神無月さんは資料を持って。今から探偵事務所へ行きましょう。そこで怪盗に連れ去られたと研究室のことを説明するんです」
︎︎イレブンは振り返り、神無月へ手をさしだし神無月は手をとる。取引が成立した瞬間だった。
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