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怪盗、倉庫へ向かう
その頃トゥエルブはひたすらに走っていた。走れば走るほど血液に乗って薬が体の中を巡っていく感覚がした。物を壊したいという衝動が人を殺したいという衝動に変わっていく。
自分の意思とは関係なくトゥエルブは、今まで盗んだ品々を保管している倉庫へ向かっていた。たった一つのボタンの掛け違いで世界を破壊しかねない物品が、大量にある倉庫へ。
ただ獣のように欲情するだけならまだ良かった。その場で射殺でもされればいい。
自分の中の理性を消され、代わりに存在しない感覚を植え付けられた感覚だった。
薬が脳に回っていく。自分が抱えているものが殺意かすら分からなくなっている。
倉庫にたどり着く。パスワード、鍵、指紋、虹彩……その他すべてをくぐり抜ける。こんな頭の状態でもできるのは、体に刻み込まれているせいだろうか。
倉庫内でふと目に入った宝石が、獲物を見つけたように赤く光り輝く。この宝石は触れた人を殺すという。間違って触られないように透明なアクリルガラスの中に入れられていた。
この宝石に惹かれてしまう原因は残り少ない理性か、溢れんばかりの暴力性か。
ああ、これが正解なんだ。これに触れてしまえば、楽に──その意思が彼の脳内を支配する寸前にある物が目に入った。
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