助手、ホテルへ

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「無事だったんですね!」  イレブンが走り寄ると酒瓶を使いかわされる。トゥエルブが片手に持っているのは、前に盗んだ世界最高峰のワインだった。 「うぃ〜ヒック……」  今どきこんな分かりやすい酔っ払いが存在するだろうか。コルクは乱暴にあけられ、少しだけ飲まれていたことが分かった。イレブンはすぐに状況を把握しあきれる。 「寝不足で薬を投与されさらに酒まで飲んだって……医者が聞いたら匙を投げつけられますよ……」  倉庫にあるワインを見つけ飲んで酔っ払い殺意を鈍らせたのだろう。本来であれば殺意を増強しかねないが、薬や毒を飲みまくって耐性をつけたトゥエルブは感覚的に酒を飲むことが最適解だと気づいたのか。  しかし未成年飲酒では……という言葉をイレブンはグッとこらえる。トゥエルブは手をひらひらとふった。 「いいからいくぞ」 「あの薬を盗むんですね!」 「いや、もうすでにしりょーはある。これでたたく」  トゥエルブは何枚か資料をさしだす。神無月はそれに目を通す。 「すごい。門外不出の不正資料だ」  神無月は心の底から山本を恨んでいたらしい。研究だけは誠実にすべきという神無月の信条に反したからだろうか。あんな訳の分からない機械があるのだから不正は確かに多そうだとイレブンは納得した。 「一連の流れは隠しカメラで録音録画しています。毒性についての説明は神無月さんがお願いします」 「……なら一つだけ質問いい?」 「なんだ?」 「貴方ってアジア系がルーツだったりする?」  神無月の質問にトゥエルブの酔いが一気にさめ、彼の眼光に赤が光る。 「なぜそう思った?」 「いや、アルコール分解酵素を持たないのってアジア系特有の遺伝子なんで。まあ、今時国際化が進んでるしそうとも言えないか」  殺気を読み取ったのか神無月は慌てて否定する。トゥエルブは獲物を認識しないように目をぎゅっと閉じ、イレブンに酒をさしだしグラスにつがせる。 「その件は黙っといてくれ。自白剤の件も黙っといてやるから」 「えっ?」 「珈琲の中に自白剤を仕込んでいただろ。おかげで色々聞き出せた訳だが」  トゥエルブはワインをグイッと飲み干した。また酩酊状態になった彼をイレブンはささえ椅子に座らせる。 「……よく見てるなあ」
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