1.創造神が見る空

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1.創造神が見る空

 大学生でありながら、彼は創造神。  とある都市の理系大学に通う少年、大高(おおたか)将史(まさふみ)という人物の趣味は、人とは少し違うものを持っていた。  運動系ではない。何故なら彼は運動が得意というわけではない。では何かというと、"二次元"に大きく関わっている趣味だ。だが、二次元世界で生み出されたキャラ達が巻き起こす物語を楽しむのではない。彼は物語を創る側――。 『思い付かないな』  小説投稿という趣味をしている。理系大学に通っているにも関わらずだ。趣味はなんだろうと聞いても、あまり想像することのないことだろう。 『読者が楽しめる……よりは、自分が楽しくないといけないよなぁ』  一人暮らしの彼は、自室のベッドに転がりながらスマホの画面を眺めていた。  もうお分かりだろうが、彼はネット小説を投稿している大学生ということになる。ネット小説は手軽で、誰でも物語を書けば投稿することができる。  彼が生み出す世界はまだ数少ないものの、多くの読者が彼の作品に注目をしていた。 『ん?なんだ?』  スマホの画面を眺めていた将史の視界に入ってきたのはメッセージアプリの通知だ。両手に握るスマートフォンが震えてメッセージの受信を伝えた。 「夏姫(なつき)?」  相手は森本(もりもと)夏姫(なつき)という人物であった。夏姫という人物は将史の彼女という立ち位置になるらしい。付き合ってからは半年くらいで、スマートフォンに向けて険しい視線を向けていた将史は、彼女からの通知を見るとその表情が柔らかなものへと変化して、メッセージ画面を開いた。 “明日、どっか行かない?“  彼女からの誘いだった。向こうから誘われるというのは、実は彼にとって初めてのことだった。彼は高揚する気持ちを抑えながら「いいよ!」と返事を返した。  そんな彼に、またスマートフォンが震えながら通知を受信した。 『あなたの作品が読まれています。揺らぐ想いはやがて君を攫って行く』  将史が書いた作品の中で一番最初の作品だ。数ヶ月の間考えて、設定や結末を書いた作品だ。 『初めて完結した作品……か……』  彼に待っているのは楽しい明日だけではない。  彼が描いた作品の完結が、私の復讐の始まりなのだから……。
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