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Happy 30th Birthday,Ayami
「あや実、おめでと〜!かんぱーい」
「ありがとう、月乃。乾杯っ」
ゴツッ…ビールのジョッキをガッツリ合わせて…コクコクコクッ…コクッ…と冷えたビールを喉から食道へと走らせる仕草が、向かいのあや実とぴったりと揃う。
「「っ…ぁあ……」」
とジョッキを置くところまで揃うが、私とあや実は双子ではない。
呼吸の合う親友で、呼吸が合うからこそ喧嘩もするし、メラメラと対抗心が芽生えるということを中学時代から繰り返してきた。
一緒に過ごした中学、高校時代以降、別々の大学に通っても連絡が途切れることはなく、途切れるどころか、大学の空気に馴染めなかったり、飲み込まれて流されそうだったりした時には、互いに励まし、慰め…時々ビシッと問題の本質を指摘したり…で
“わかってるけどただの愚痴だよっ、それをわざわざ言わないでっ”
と逆ギレしてみたり…
このキレた気持ちも見透かされていることに、お互い恥ずかしさがなくなったころ
【親友】
になれたのかな?と、私、戸倉月乃は思っている。
その親友、川野あや実の30歳の誕生日の今日は、私が夕食をごちそうするんだ。これは、二人が大学卒業した後の習慣。
「あや実お姉さん」
「…言うと思った。飽きもせず毎年同じセリフだよね」
「これからもずっとお姉さん」
「ニヤニヤ笑うのは美しくないよ、月乃。普通に可愛いんだからニヤニヤはヤメ」
この、誕生日恒例“お姉さんトーク”が、三十路のあや実におかしなぶっ刺さり方をしたことが…この話の始まりだ。
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