この時を待っていた

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この時を待っていた

 その日、王宮で夜会が行われていた。  公爵令嬢のアンジェラ・エヴァンスは一人、華やかな会場で遠巻きにされながらポツンと佇んでいる。  やっと今日で最後になるのかしら? ここまで長かった……。漸く終わりを迎えられるなんて、嬉しくてしょうがない。  遠巻きにされるような状態でいるのに、アンジェラは込み上げてくる笑いを、扇子を開いて隠していた。  会場内の音楽が止み、ダンスをしていた令嬢令息たちは動きを止める。壇上の方向に一斉に視線が向けられた。  入場の音楽と共に、会場に王族たちが入ってくる。王が、王妃をエスコートしながら壇上の中央で止まった。  アンジェラは、いつ見てもお二人の立ち姿や威厳溢れる佇まいに憧れを感じる。今日も、本当に素敵なお二人。  その後に、王子たちが自分たちの婚約者を伴って入場した。  アンジェラは、その一連の演出をずっと見守っていた。本来ならアンジェラは、王子の一人と一緒に入場するはずの立場だった……。  その王子の傍らには、よく知っている令嬢が寄り添っている。当たり前の表情で、王子と二人見つめ合っては笑顔を零す。  寄り添っているのは、この国の第二王子。金髪でエメラルドのような瞳が美しい。誰が見ても、美男子で令嬢たちの憧れ。  ただ、アンジェラだけは憧れを持ったことも、好意を抱いたことも一度もなかったけれど……。
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