3人が本棚に入れています
本棚に追加
困惑の色を浮かべたアズハの瞳がココネに向けられる。
「確かに使ったわ。でも私達はただ……、襲われていた兵隊さんを助けたかっただけなの」
「その中に、僕の父さんが居た……」
「うん……」
「けど! 悪魔の――旧世界を滅ぼした炎の力を使うなんて!」
「ぁ…………」
アズハの鋭さを帯びた言葉に思わす俯き、ココネは唇をぎゅっと噛んだ。
冷たい風が銀色の髪を揺らし、整った横顔に影を落とす。
ココネはそれ以上言葉を紡がなかった。
アズハはココネを攻め立てるように放った言葉を、こぶしの奥に握りしめた。
――ココネにそんな事を言ったって仕方ないのに。
後悔と後味の悪さを、いつもの仏頂面で覆い隠す。
「ごめん。もういい」
「アズハ……」
「雨が降りそうだ、帰ろう」
重苦しい空気のなかアズハは辛うじてそれだけ言うと、色褪せてゆく祭儀場にくるりと背を向けて麓に向けて歩きはじめた。
最初のコメントを投稿しよう!