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そして僕らは夏を探しに
「ひっまわりー。ひっまわりー。なーつのひまわり、ぽっこぽー!」
息子のゆうくんは、何やら歌を歌いながら白い紙に御描きをしている。男の子の六歳というと、まだ小学校に上がる前ということもあって子供っぽい子も少なくないだろう。しかし、親の贔屓目があることを承知で言うならば、私の息子は頭の良い子だなと思うのだ。
例えば今、彼が御描きをしている白い紙は、広告の裏、もしくは印刷のミスプリントの裏である。幼稚園に入ってからたくさんお絵かきをするようになったゆうくんは、家でも大量に紙を消費してしまうことが多い。そのため、私が仕事(テレワークでやっているものだ)で使う印刷用の紙にお絵かきをされてしまうと、結構困ったことになってしまう。
それで一度、“裏も表も真っ白な紙にお絵かきをするのはあんまりしないでくれる?”と頼んだところ。彼はそれ以来、広告の裏やミスプリの裏にお絵かきをするようになった。ちょっとだけ申し訳ないが、非常に助かっている点である。
さらに。
「ひっまわりー。ひっまわりー。なーつのひまわり、ぽっこぽー!」
彼はクレヨンでお絵かきをすると、紙を重ねた時にべったりとくっついてしまうということを学んだらしい。
ここのところ、色鉛筆を使うことが増えた。そして、色鉛筆なら描いた紙を重ねてもさほど問題がないということにも気づいたようだ。テーブルの上、彼の左にはお絵かきが終了した“作品”が積み上がっている。今本人の中でマイブームなのは、向日葵の絵を描くことらしい。
――我が息子ながら、なかなかの画力ね。……実は芸術家肌なのかしら。
通りがかったところで親馬鹿を発揮してにやにやしていると、息子は急に歌うのをやめて振り返ったのだった。
「ねえまーま!今日、まま、おしごとおわってるの?」
「え?ま、まあ……」
今日書かなければいけない原稿は終わっている。そろそろ買い物にでも行こうかと思っていた頃合いだ。
ちなみに、今日息子が幼稚園に行っていないのも、土曜日だからという単純な理由。残念ながら学校事務をしている夫はオープンキャンパスの仕事に駆り出されているらしく、仕事を休むことができなかったのだが。
「だったら、ぼく、おでかけしたい!」
そして、息子は目をキラキラさせて言ったのだった。
「夏をさがしにいこうよ、まま!」
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