769人が本棚に入れています
本棚に追加
/356ページ
◇◆◇
スイレンという珍しい名前は異国の花が由来なのだと、亡くなってしまった両親は言った。
母親もスイレンと同じようにガヴェアの王都で瑞々しい生花を籠に入れて売り歩く花娘達の一人だったので、変わった名前の理由も大人になるにつれ納得が出来た。
魔法大国ガヴェアは、魔法の資質で全てを問われる国だ。幼いころに両親を亡くし、自分一人だけになってしまって、せめても母親の得意な花魔法の資質を受け継いだのは彼女にとって良かったことなのだと思う。
「スイレン。おはよう。今朝は、赤い花と白い花をおくれ」
食堂で飾る花を、毎朝買ってくれる宿屋の女将さんは常連だ。
毎日、大きな花籠を持ったスイレンがこの通りを通る頃に、店の前で待っていてお釣りの心配がないよう、丁度のお金を渡してくれる。
最初のコメントを投稿しよう!