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十一.
「『いつもの』?
あれ?
マリノとはこないだ初対面だったんじゃ……」
ちょっと、状況が、わけがわからない。
両耳を引っ張って考えている僕に、城崎が大きな笑い声を上げた。
「ごめんね、ちょっとだけ、運命的な再会を演出したくて、ハロと一緒に一計を案じたの。
実はハロとは高校からの仲間なんだ」
「え……えぇ!?」
「でね、ハロが『大学で仲良くなったやつがいてさぁ』なんて写真見せながら色々話してくれて、それがユッキだって分かって、もうびっくりしちゃって。
なんかこう、すごい運命感じたの」
頭が大混乱しつつも、あれ、もしかして、だとしたら、という懸念がよぎる。
「いや、じゃあ、もしかして、だとしたら、釣りの時の話って、全部……」
「それが嘘じゃないから衝撃だったのよ!」
興奮気味に城崎がアルバムをパンッと閉じた。
「え……いや、あの時はなんとなくその場の雰囲気で信じちゃってたけど、リアルに考えて、有り得る?」
「だから『当初の想定を遥かに上回る』運命力だってのよ!
うちらちょっとヤバくない!?」
確かにヤバい。
こんなの確率で言ったらどれだけ小数点以下にゼロが並ぶだろうか。
いや、しかし意外と世の中とはこういうものなのかも知れない。
自分が知らないだけで、自分の知らない所で、色んな人や出来事が複雑に折り重なり合い紡がれていくのが、運命ってやつなのかも知れない。
だとすると、むしろ僕ら二人にとっての運命の人というのは鞠野羽郎なんじゃないかという気もしてくるが。
それを城崎に伝えると、城崎は「そうね」とうなずきつつも、
「まぁ、さ、ハロの存在も、今は、あたしたち二人のためだったんじゃないかな、とか思っちゃうけど?」
照れを隠すように一気にコーヒーを飲み干した。
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