四.

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四.

それから一時間ほど各々に釣りを(いそ)しんだ後、僕ら三人は川原に並べたテーブルと椅子、七輪で焼いた川魚で、少し休憩することにした。 「二人ともあたしと同い年なんだね」 kinoが大きなヤマメの背にかぶりつき、口いっぱいに頬張(ほおば)る。 「あぁ、そうなんだよ! 大学のツレでさ!」 早々に数匹をたいらげたマリノが紙コップをあおった。 が、(から)だと気付いて背後のクーラーボックスに手を伸ばし、 「あれ、もう飲み物無いじゃん。 俺ちょっと買ってくるわ!」 と立ち上がった。 「いや、僕が買って……」 ここは普通、運命の男・マリノに気を()かせて僕が行くべきではなかろうか。 だが足早に歩み寄ってきたマリノが僕に顔を寄せると、 「俺はお前をパシリなんかにせず自分で買い物に行ったりして、マメでフットワークの軽い男ってことで高感度を上げたい。 すぐ戻るからちゃんと引き止めておけよ。 それじゃ、ちょっと行ってきまーす!」 僕の返事も許さぬ勢いで、国道へと抜ける林道を駆けて行った。 残された二人の間に、川のせせらぎ、野鳥の声、吹き抜ける秋風と木々のざわめきだけが流れる。 kinoは手持ち無沙汰(ぶさた)になったのか、スマホを取り出しいじり始めた。 こういう場合に、どうしたらいいのかわからない……。 両耳に手を当て、軽く引っ張りながら考える。 しかしとりあえず今僕にできることと言ったら、 「また釣り、する?」 大きな岩に並んで立てかけられた三本の竿を指さした。 「あぁ、うん、そうだね」 上目遣(うわめづか)いにちらりと僕を見たkinoが、スマホを置いて立ち上がった、が、 「あれ、そのネコの絵……」 一瞬見えたそのロック画面のイラストに、僕は思わず声を上げた。
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