13人が本棚に入れています
本棚に追加
四.
それから一時間ほど各々に釣りを勤しんだ後、僕ら三人は川原に並べたテーブルと椅子、七輪で焼いた川魚で、少し休憩することにした。
「二人ともあたしと同い年なんだね」
kinoが大きなヤマメの背にかぶりつき、口いっぱいに頬張る。
「あぁ、そうなんだよ!
大学のツレでさ!」
早々に数匹をたいらげたマリノが紙コップをあおった。
が、空だと気付いて背後のクーラーボックスに手を伸ばし、
「あれ、もう飲み物無いじゃん。
俺ちょっと買ってくるわ!」
と立ち上がった。
「いや、僕が買って……」
ここは普通、運命の男・マリノに気を利かせて僕が行くべきではなかろうか。
だが足早に歩み寄ってきたマリノが僕に顔を寄せると、
「俺はお前をパシリなんかにせず自分で買い物に行ったりして、マメでフットワークの軽い男ってことで高感度を上げたい。
すぐ戻るからちゃんと引き止めておけよ。
それじゃ、ちょっと行ってきまーす!」
僕の返事も許さぬ勢いで、国道へと抜ける林道を駆けて行った。
残された二人の間に、川のせせらぎ、野鳥の声、吹き抜ける秋風と木々のざわめきだけが流れる。
kinoは手持ち無沙汰になったのか、スマホを取り出しいじり始めた。
こういう場合に、どうしたらいいのかわからない……。
両耳に手を当て、軽く引っ張りながら考える。
しかしとりあえず今僕にできることと言ったら、
「また釣り、する?」
大きな岩に並んで立てかけられた三本の竿を指さした。
「あぁ、うん、そうだね」
上目遣いにちらりと僕を見たkinoが、スマホを置いて立ち上がった、が、
「あれ、そのネコの絵……」
一瞬見えたそのロック画面のイラストに、僕は思わず声を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!