五.

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五.

僕は趣味の延長で、ネットにフリー素材のイラストを上げている。 この子供の落描き風の『あのねこ』はその一つであり、僕のネット上でのアイコンでもある。 「あぁ、これ、かわいいよね」 「あ、うん、ありがとう……」 「『ありがとう』?」 首を(かし)げるkinoに、 「あ、いや、その絵、僕の描いたやつで……って、あれ?」 彼女が示す画面のネコに違和感を覚えた。 なんだか(つたな)い。 これはフリー素材に上げているものでは無い気がする。 とすると、 「これ、君が描いたの?」 彼女が真似して描いたのかと思って(たず)ねてみた。 が、彼女はふっと複雑な笑みを吹いて飛ばすと、 「正確には、あたし『も』一緒に描いた絵だよ。 忘れたの? ユッキ」 「え?」 『ユッキ』は、幼稚園時代にだけ呼ばれていた、僕のあだ名だった。
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