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六.
「さて、私は誰でしょう?」
kinoが悪戯っぽく微笑んだ。
「あたしはすぐにユッキだって気付いたけどね。
ユッキ、体が大きくなっただけでほぼあの頃と同じじゃん。
髪の毛ぼさぼさで、眉毛太くて目が細くて、考え事する時に両耳を引っ張る癖とか」
「えぇと、ごめん、ちょっと待って……」
無意識に両耳を引っ張る。
幼稚園時代から、このネコの絵は確かにいつも描いていた。
その時、そう言えばいつも隣に誰かくっついていたような……。
すっかり忘れていた記憶が頭の中を駆け巡る。
「あ……!
え、まさか、城崎?」
言いながらもまだ信じられない顔で見詰めている僕に、
「ったく、気付くのが遅いよ、って言っても、まぁ仕方無いか。
小学校からは別々だったし、幼稚園以来の十五年ぶりだもんね、普通はわかんないか」
「わかんないよ、全然、違うし……」
「大人になったもんよねぇ」
kinoこと城崎は、その場でくるっと回って見せた。
思い出の幼稚園児とは、そりゃまぁ、顔も服装も体つきも、全然違う。
まじまじ見つめるのがなんだか恥ずかしくなって、目をそらした。
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